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新型コロナ肺炎に見るファシズム(結)

渋谷 一三
439号(2020年6月)所収


新型コロナ肺炎に見るファシズム(7)より続く)

18.維新の会こそ本格的ファシズム「政党」

前稿で、

  1. 『ファシストが政治権力を握っている状況が世界的に進行している。
    日本に於いては、維新の会と安倍派がそれなのだが、今回のコロナ肺炎事態で、安倍派の方がよりファシズム体質であることが鮮明になった。』
    と書いてしまった。
    同時に
  2. 『維新の会は、こうした事情をするどく嗅ぎ分けて、倒産の瀬戸際に立たされている飲食店の店主や、就労機会がなくなって飢餓線上をさまよっているフリーターや派遣社員などの労働者階級下層などの利害を代弁することに成功している。
    安倍はその政治手法がファシストなだけで、所詮は小ブルや下層の利害を感じ取ることなど出来ない無能なボンボンにすぎない。安倍派はファシズム運動を領導する能力など全くない存在であることが暴露された。』

と結論で括っている。

16章で述べた@『ファシストが政治権力を握っている状況が世界的に進行している。
 日本に於いては、維新の会と安倍派がそれなのだが、今回のコロナ肺炎事態で、安倍派の方がよりファシズム体質であることが鮮明になった。』との記述が誤りで、『安倍派の方がよりファシズム体質であることが鮮明になったかのように見える。』と記述すべきだった。
 記述の誤りに気付かずに、矛盾した正反対のことを断定している文章になってしまっていたことを、お詫びして訂正させていただきたい。

 さて、第2次安倍内閣でのスキャンダルは枚挙にいとまがない。
 野党は追及せざるを得ない悪行のため、時事課題での論戦を組織することも出来ずに追及を続ける。自公政権は辞任も辞職もせず居直り続け、野党の追及を長引かさせて、そのことをもってして「重要な課題の論議をせずにいる政権担当能力のない野党」という攻撃材料にしている。
 最近フジテレビの番組への出演を梃子に、なし崩し復権を遂げようとしている甘利事件よりもずっと最近のここ数年のスキャンダルだけをとってみても、すごい数である。

1 森友学園土地破格値払下げ事件
2 加計学園初めに有りき偽装入札事件
3 佐川国税局長官の森友学園関係文書改ざん事件
4 柳瀬首相秘書官の加計学園関連での国会での偽証不問事件
5 福田財務次官の女性記者へのセクハラ居直り続け事件
6 「桜を見る会」での税金を使った安倍後援会活動居直り事件
7 「桜を見る会」資料、シュレッダー証拠隠滅事件
8 なかったと強弁していた自衛隊資料の存在が発覚したのに居直り続けている事件
9 安倍夫人の2度にわたる『自粛要請』無視事件への安倍の居直りを、夫人を守っている美談にすり替える事件
10 あべマスクの発注における不正隠蔽事件
11 検察の子飼い化を固定化するための定年延長正当化法案と黒川検事長の新聞記者抱き込み癒着自粛要請無視賭けマージャン常態化に対する、極度に軽い処分を要求し実現させたことを居直り通す事件
12 電通を通じての世論操作への報賞としてのマル投げ10億円利益中抜き幇助事件
などなど枚挙に暇がない。
 
 ここを貫く異常さは、全て居直り通していることである。
 民主主義の原則の一つであるリコール=汚職した吏員の罷免 が全く機能していないのである。
 安倍自公政権がファシスト政権であることの証左である。
 これは、報道機関への恫喝と抱き込みや検察の取り込みなどに成功した“安倍一強態勢”の構築によって実現されたファシズム体制である。
 しかし、そのファシズム体制は全く貧弱で、独裁態勢の構築の手法だけがファシズム(というよりナチズム)である。その証左が下層階級の利害を全く代表できず、大阪府の吉村知事の打ち出す政策にことごとく遅れを取っているという事実である。
 と、言うよりも、吉村知事の出した政策をあわてて模倣している。

19.小ブルジョアジーや労働者下層の利害を代表出来ている吉村知事
  ―本稿が打ち出したコロナ政策と同じ政策が後日、発表される―

 専門家は責任を追及されるのを恐れるあまりに、コロナの伝播力を誇大に吹聴したり、緊急事態態勢をことさら長引かせたりすることしか提言しない。安倍政権御用達の御用学者に至ってはこの傾向は甚だしい。
 このような状況では、飲食店・町工場などの小ブルジョアジーはどんどん倒産していくしかない。また、派遣労働者やパート労働者さらには学生バイトという名の底辺労働者は食べて行くことが文字通り出来なくなっていた。
 この状況に陥らないよう、筆者は風俗営業関係以外の休業は必要ないことを一貫して主張してきたが、政治家レベルでは吉村知事が初めて“コロナ死者を一人でも少なくしよう”という単線的ファシズム言論を破る努力をして、道を切り開いた。
 この努力がなければ、休業・休校はなおだらだらと続けられ、多くの経済的死者を生んだことだろう。
 不思議と吉村知事は松井市長とははっきりと異なり、下層階級の利害を代表する政策をとることが出来ていた。この姿勢は維新の会の陰の代表たる橋下徹氏とも、細かな、しかし、本質的相違を貫いていた。
 このことから、ファシズム政党としての「維新の会」を最も純粋に代表しているのが吉村氏であることが判明した。

 吉村氏はさらに踏み込んで、「緊急事態宣言は必要ではなかった。」と論証している京都大学准教授を府の専門家会議のスタッフに迎え、首相安倍の緊急事態宣言が人の意見を聞く力もなく御用学者のいいなりになった暴走であることを明らかにした。
 
だが、他方、松井氏は府と市が一体となった実質的大阪都体制があったから新規感染者0になれたなどと、我田引水の非科学的主張を平気で唱えている。
 都体制がそんなに素晴らしいものならば、東京都の新規感染者はとっくに0になっていなければいけないはずだ。事実は東京都のみがコロナの一旦の封じ込めに成功していない。
 松井氏がまともなファシストの水準に遠く至っていないことが暴露された。
 ちなみに、吉村氏は、コロナと都構想は別個に議論されるべきだと正しい態度をとることが出来ている。
 だが、彼は事あるごとに「日本共産党」や「立憲民主党」とは相容れないと言及する。不満が鬱積する下層階級の利害を代表出来ていない「左翼政党」の存在があるからこそ、下層階級の利害を代表出来ているがゆえに、これを代表出来ない「左翼政党」を忌み嫌う政党が発生する。ファシズムの発生する根拠である。
 こうして発生するファシズム政党は、下層階級の利害を標榜しつつ、その支持基盤は「左翼政党」を嫌う地主・資本家(産業界)・軍に軸足を持つことになる。これもまた、ファシズム政党の特徴である。単独では生き残れそうもない没落する余地のある中間層が、「徒党を組む」=「ファッショ」必要を肌で感じているのだ。

 筆者は、新型コロナ事態に関しても、何が労働者階級下層の利害になるのかを明らかにするように努めてきた。したがって、あえて、ぶつ切りの原稿の段階でも公表していく方法を選んだ。

  1. 医療崩壊を回避すること。(第3節 新型コロナ肺炎に見るファシズム(1)
  2. 社会活動が委縮すれば社会崩壊が起き、克服に何年もかかる大不況が人を殺すことになる。(第3節 新型コロナ肺炎に見るファシズム(1)
  3. 全国一斉休校は必要なかった。(第4節 新型コロナ肺炎に見るファシズム(1)
  4. 一斉休業は必要ではない。風俗営業の休業要請に絞るべき。(第5節 新型コロナ肺炎に見るファシズム(2)
  5. Go To キャンペーンなど必要ない。今は資金を医療に集中して投入し、風俗業への休業補償と学校の再開をすべきである。(第6節 新型コロナ肺炎に見るファシズム(3)
  6. スウェーデンが、マスクの着用とSocial Distance を徹底するだけで、学校を休校にすることもなく、休業する企業もなく、感染を抑えこむことができた。(第13節 新型コロナ肺炎に見るファシズム(6)
  7. 休業はもうやめるべきだ。要は、必要のない休業要請をしているだけなのだ。(第15節 新型コロナ肺炎に見るファシズム(6)

逐次突き合わせていただければ分かると思いますが、マスクの配布は学校で児童・生徒に配布するという細かいことに至るまで、筆者と吉村知事の政策とは殆ど一致してきた。
 筆者の発表の方が早いから、筆者が吉村氏を模倣していないことは証明されている。だから、吉村氏のブレーンが本稿を見て模倣したと言いたいわけでもない。下層階級の利害を第1に考えると同じ結論に至るのだということを言いたいのである。
 ファシズムの条件である「下層階級の利害を標榜する」ことが出来ているのである。
 
 ファシズムが発生する第2の条件=「下層階級の利害を出来る政党(野党)がない」ことをこの間の野党の発言を追って、見て行こう。

20.相変わらずのレッテル貼りしかできない辻元清美=ファシストの友

検事長のSTAY HOME キャンペーン期間中の度重なる新聞記者との賭けマージャン事件の追及にあたって、最も暴露しなければいけないのは、記者宅での度重なるマージャンで記者を取り込みマスコミ支配をしていたことなのだ。
だが、レッテル張りしかできない辻元氏は、「子どもたちにステイホームと言っておきながら、(示しがつかない)」とか、「(法を守るべき)検察官が違法な賭けマージャンをしている。」などとお説教をして、何も暴露できなかった。
賭けマージャンなど当たり前で、殆ど皆が賭けてマージャンをしている。賭けなかったら、ちっとも面白くないゲームなのだ。これをつつくことで、賭けマージャンをしている我らが下層階級の人々を敵に回して、共感を組織することすらできなかったのだ。
賭けマージャンを非難することしかできない感性が、すでに下層階級のものでない。

かくして、下層階級の利害を反映するものと期待されていた立憲民主党が、下層階級の支持を得られないことになってしまった。
ここに、ファシズムの成立する根拠がある。

21.日本共産党の意見もまた、下層階級の利害を反映すらできていない。
  ―野党がダメなのが、ファシズムが成立する条件の一つー

4月4日に発表された『緊急要望』を見てみよう。

1. 自粛要請と一体に補償を行うこと。
2. 医療・介護・障害者等の社会保障の体制を崩壊させないための予算措置を行うこと。
3. 消費税5%への減税に踏み切ること。

と、なっている。政府方針への批判はなく、補償などの金額を多くするだけの“方針”でしかない。
 国家が万能の神様であるかのような信仰を持っているとしか思えない。
 総じて、バラマキの要求。国家予算が破綻する実現不可能な要求の羅列である。
 程度を激しくして要求するのが野党の役割だとしか思えていない有り様が浮き出て見える。そのようすを、はっきりさせるために、1節に限ってその詳細を見てみよう。

(1) 緊急にすべての国民を対象に一人10万円の給付金を支給すること。
(2)賃金・収入の8割以上を補償する手立てをとること。
(3)「自粛」による倒産・廃業をさせないために、固定費などへの補償、税・社会保険料の減免を行うこと。
(4)イベント中止などにともなうキャンセル料・必要経費の補償を行うこと。
(5)無担保・無利子融資を当面20兆円以上の規模にするとともに、速やかに受けられるようにすること。
(6)リストラ解雇を起こさないよう、経済界・大企業に雇用責任を求めるとともに、万全の体制を講じること。
(7)各自治体が取り組む地域経済対策を支援するために、「地方臨時交付金」制度を創設すること。

ご覧の通りである。
国家独占資本主義段階の思考のままである。

休業の範囲を無批判に受け入れ、突然の上位下達全国一斉休校を無批判に受け入れ、検査体制の構築すらしていない事実を無批判に受け入れて予算措置を講じろと言っても何の具体的意味を持たない。

野党が下層階級の利害を代表することが出来ていないことが、ファシズムが成立・発展していく条件である。

立憲民主党に続き、それ以上にひどいのが日本共産党だった。

22.ファシストは暴力を否定しない。

ナチに限らずムッソリーニも選挙で多数派になった後、独裁体制に移行するにあたって、それまでに育成してきたクーデター要員(専門的技術を持ち平然と暴力を行使できることが条件)が進撃する形で権力奪取した。

23.日本の新左翼の暴力革命論議の再検討が必要ではないか。

日本の新左翼は、インドネシアのスハルトによる共産党への血の弾圧と共産党の壊滅、南米チリのピノチェトによる左翼政権転覆クーデターとそれに続く血の粛清という流れを受けて暴力革命を思想的に復権した。
 新左翼発祥のフランスにおいては、毛沢東の評価を通しての思想上の暴力革命の復権だった。すなわち、『銃口から政権が生まれる。』であり、『日本軍が来て、中国革命が成功した。』である。
 ここまではよし。
 だが、日本の新左翼は「暴力第1論」だの「暴力革命の道」なる、いわば暴力道なる日本特有の『道』にしては来なかったか。
 学生運動では街頭闘争プロパガンダと全共闘運動で多数派になることはできたものの、社会的に多数派になることはなかった。維新が多数派とは言えないにせよ、大阪においては明らかに議会・首長選挙での多数派になることに成功している。
公明党を恫喝するための解散で市長と知事が交代したことが幸いして、吉村知事は、新型コロナ対策で日本一の成果を挙げた。ここに至って、大阪における「維新の会」の地位ははっきりと多数派になったようだ。
国レベルで多数派になれば、クーデターによる権力奪取は可能になる。維新支持層のコアな部分は下層ゆえにもともと暴力的であり、左翼を殺すぐらいのことは平気で出来る力を持っている。維新がムッソリーニのように計画的に要員を育成すれば、簡単に専門的技術をもった武装集団ができあがる。
下層に依拠していなかったオウム真理教ですら、クーデターの準備をしていたぐらいなのである。選挙で多数派を形成している「維新の会」であれば、これはかなり現実味を帯びている。

翻ってみれば、日本の新左翼は暴力第1「論」で内ゲバを発展させ瓦解し、「議会からの道」(日共)を否定するあまりに「暴力からの道」とでもいう体系を対置し、今や維新の会のファシズムの暴力革命に負けようとしている。
一度も国民の思想的多数派をとったこともないのである。
『議会か否か』なる論争は不毛だった。
ファシストは下層のその時々の生きた利害を掲げることを通して議会でも多数を取ることに成功していた。ナチズムですらこの水準は達成していた。

 日本の新左翼は思想的に多数派を取ることもできなかったし、労働者階級の生きた利害を表現することも出来なかったし、議会で多数派を取ることもできなかった。一番最後まで残った中核派が議会への進出をはかって活動してもいたことは示唆的ではないか?

―以上―

2020/06/28


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