共産主義者同盟(火花)

新型コロナ肺炎に見るファシズム(3)

渋谷 一三
437号(2020年4月)所収


新型コロナ肺炎に見るファシズム(2)より続く)

6.ポピュリズム(人気取り)とショウヴィズム(かっこつけ)

マスク配布にはあきれた。ファシストの真骨頂である人気取りにもかっこつけにもならないからだ。税金の無駄遣いの見本のようなことを、本当にしてしまっている。
安倍内閣の人気取り政策は初めから今に至るまで全てこれに貫かれている。一貫している。
そこで今回の“経済支援”だが、打ち出した施策のどれもこれもが、対象が限られた極めて薄い層になるようにしてある。その上で、支援策だと大々的に宣伝する。誇大広告のオンパレードである。

初めが「休業補償」。
蓋を開けてみると、「有給休暇を取らせろ。」「学童の保護をするために仕事を休まねばならなくなった親へ、一日当たり4100円の給付」「仕事が無くなり収入の減ったフリーランスの自営業者に一日4100円の給付」が、『緊急支援』の中味だった。
「有給休暇を取らせろ。」は、政府のふところは全く痛まない。最大20日間の有給休暇がとれる公務員と大企業の社員以外は、10日程度あれば良い方だ。一か月に及ぶ休校に耐えられるものではない。その上実際にはシフトがあって、有給休暇をそう簡単にはとれないし、有給休暇の買い上げもないのが「フツー」の職場の実態である。金持ちのお坊ちゃん内閣の面々は、そんなことも知らない。
「学童の保育のために仕事を休まなければならなくなった」ことを証明できる親が一体何人いるというのだろう。多くの「共稼ぎ世帯」の親は、共稼ぎが常態であるがゆえに、近隣に祖父母がいるよう住居も選んでいる。また、兄弟姉妹の上の子に下の子の世話をさせるのが常態で、「仕事を休まなければならなくなった」ことを証明するのは至難の業だ。
「フリーランス」の証明が難しい上に、受注出来たはずの仕事が無くなったことを証明するなんてことは事実上できない。

こう見てくると、「支援策を講じてますよ」
と、該当者以外の国民にアピールしているだけであることが分かる。
その次に出てきた“経済対策”が「コロナ収束後の旅行代金の半額補助(1兆円)」
最初に痛手を受けている旅行関連の、旅館・ホテル・土産物・デパート・鉄道バス航空・旅行代理業などなどでの莫大な遺失利益をあとで補ってやるよという政策だ。
驚くのは、その予算規模の大きさだ。休業補償の総額の少なさに比較して、旅行に行くような富裕層への支出の大きいこと。その上、このような富裕層はコロナ騒動が収束したら尚更国内旅行などへ行かない。予算が余る。ということは、救済策にならないということ。
そもそも肥大化したインバウンドの需要を満たすために旅行関連業者は増えてきたところだ。その需要が減少するのだから、需要の減った分、倒産する以外にない。日本の場合、外国人旅行者数の増大が急激であった上に最近のことなので、需要を満たすための設備投資が回収されていないため、多くは借金漬けであり、数か月に及ぶ無収入に耐えられるものではない。
「獲らぬ狸の皮算用」的な“経済対策”である。

だが、こうした「対策」を次々と打ち上げ、マスコミが繰り返し報じていると、なにやら政府はとても一生懸命頑張って、やれることのほぼ全てを全力でやっているかのような印象を植え付けることが出来る。
安倍内閣に限らず、橋下徹府市政や小池都民ファースト都政など、ファシスト政治に共通するのがこうした宣伝煽動の繰り返しである。

給付関係も同じ構造。
当初、全世帯に10万円の給付とぶち上げた。冗談ではない。こんなことをしたら5兆円の支出になる。
もちろんそんなことは出来ないので、20万円に増額とぶち上げ、損失を被った人とこっそり制限を加えた。
これで給付対象はガクンと減った。
だが、これでは20万円以下の損失(収入減少)であっても、自己申告しさえすれば給付せざるを得なくなる。
そこで給付をしたくない安倍は、例によって、30万円に増額とぶち上げ、「一定の水準以下の世帯」と条件をさらに狭めた。これでバッチリ。給付対象はごく一握りになった。生活保護世帯や年金世帯は収入が減るわけではないから、除外される。さらに、30万円給付するならそれ以上の損失がなければならないわけで、20万円時より給付対象は減少する。
給付による景気対策効果は0なのである。
これに反して企業へは手厚い対策を用意している。
休業補償に要した企業側の費用は全額補填すると決めている。
ファシストの狡猾な人気取りの手法が露呈した。

2020年4月4日

新型コロナ肺炎に見るファシズム(4)へ続く)




TOP