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労働者階級の合法政党について

渋谷 一三
379号(2013年6月)所収


<はじめに>

 前稿「アベノミクスのうそ」で「世論調査という世論操作に影響されて、自民党を支持したり、みんなの党などの新自由主義政党を支持したり、維新の会などのファシズム政党を支持したりする労働者が多くを占め、公務員や大企業の正社員などの帝国主義に買収された労働者は民主党なる特異な非労働者政党に包摂されている。要するに、労働者の大半は労働者階級の政党に組織されていないのである。」と述べた。さらに「労働者階級の国会政党がない以上、当たり前の現実と言ってしまえばそれまでのことではある。」とも述べた。
 労働者階級の合法政党がないために、労働者階級が非労働者階級の影響の下に包摂されている現状から、「労働者を解放する一助に帰」することを拙稿の任務としてきた。
 しかしながら、日本共産党は労働者階級の合法政党を目指して改変され組織され続けてきたはずの政党である。日本社会民主党もまた社民主義による労働者解放を目指す合法政党のはずである。が、そのどちらも現実の運動や政治において具体的に労働者階級の利害を表明することが出来ていないのも真実である。
 労働者階級の政治の先進性なるものはア・プリオリにあるわけでもなく、具体的運動や論争を通じて獲得し続けていく以外にない。日本共産党がこの役割を担うことが出来なくなって久しいのは、その硬直した組織性・個人崇拝・スターリニズムと総称される「真理は我が手中にあり」とでもいうべき「科学的社会主義」の態度による。そしてこれが改まることはありえない。改まるということは全く別の組織になるほどの全面的改変だから。社民党も然り。党首以外には人材がなく、労働組合あがりのまともに経済学を勉強したこともないロビーにうろつく腹黒たちというイメージがぴったりの人物だらけで、論争を組織する力などない。
 だから、新たな労働者階級の合法政党が必要だと主張したいのではなく、論争等を具体的に進めることが『労働者階級の合法政党』の役割を具体的に担うことだと主張したいだけである。この見地から、読者は火花論文を無断で引用していただいて構わない。大いに歓迎するところである。

1. またしてもの株価の暴落

 5月23日、日経平均株価は1143円暴落した。その後も株価は下がり続け、アベノミクスなる虚構へのお付き合いパーティは終わった。
 このことは前稿「アベノミクスのうそ」で予言した通りのことで、それ自体は驚くにあたらない。問題は、性懲りもなくバブルをつくり、またぞろバブルの崩壊を起こすしかない資本主義の現状にある。
 マスコミは「アベノミクス」なる言葉にお追従と賛辞を送り続け、これに批判的な経済学者の言説などは抹殺し続けてきた。このことへの反省など全くなく、株価の断続的暴落という現実を前にして、今度は「アベノミクスの危険性」を宰相殿の顔色を見ながら、おそるおそる展開し始めた。
 筆者が前稿で指摘した通り、株価の暴落はバブル分を吐き出したところで調整されるはずであり、株価の高騰は投資家にとっては迷惑なことでしかない。もっとも、ギャンブル投資家・禿鷹ファンド・ヘッジファンドなどと称される投資家もまた投資家であり、これはこれで投資という機能の不可分な役割を果たしているので、筆者の「一般投資家には迷惑」という表現も正確ではない。世の個人投資家なる小株券所有者には迷惑なのだが、当人たちにはその自覚は全くといっていいほどなく、いっぱしの経済評論家を気取って株価の上昇を歓迎し、安倍政権を支持してみせたりしてきた。要するにゴチャゴチャである。

 ごちゃごちゃの中でやっと明らかにされた事実がある。
 5月23日の暴落はFRB(米連邦 準備制度理事会)議長の「金融緩和の縮小の可能性がある」旨の発言による。「緩やかな景気回復とそれによる株価の上昇」という虚構を作りだしてポーカー・ゲームを続けてきた投機家=投資家たちが真顔に戻ってしまって、ゲームを降りる「利益確定売り」に出たのである。
 事情を知らない一般投資家なる証券会社の顧客(餌食ともいう)層が、高値の株券を掴んだまま、売れば損するしかない局面に立たされて茫然としている。一般投資家なる素人さんが利益確定売りをすることができない水準まで一気に株価を下げてしまうことが肝要である。玄人投資家の資金源は素人さんなのだから。
 こういう事情で株価は必ず一気に下がる。すなわち暴落するのである。
 じゃぶじゃぶにした日本円で買った日本株を海外投資家(禿鷹ファンドと呼ぶのが好きな人もいる)が一斉に売り抜いたのである。株式市場から出たじゃぶじゃぶの円に行き場はなく、これが再び円carry trade に向かうのは時間の問題である。マネーゲームとマスコミが呼ぶ現象の始まりである。無くなりようがない。その原因は円をじゃぶじゃぶにしてしまった安倍政権とその手下の黒田日銀とにある。
 高値の株を手にしたまま茫然と立ち尽くしている素人さんたちはやっと「アベノミクスは灰色」と言いだしたが、明日にはまた懲りずに自民党に投票するのであろう。

 筆者がこれもまた前稿で指摘した通り、円高がゆっくりと進行している。円高が進行するから海外投資家が売りに出る。売りに出るから株価はまた暴落する。暴落しすぎると買うから少し円高になる。あまり円高になると買わずに売りにでる。かくして進行はゆっくりになる。が、円高(戻り)は確実に進行する。
 この過程の行き着くさきには、物価の上昇だけが残って、「インフレ・ターゲット」が成功したと喜ぶ財界と、またもや相対的に貧困化した労働者上層部と絶対的貧困層の増加という現実が待っている。
 労働者階級と小ブルジョア階級は自民党に投票していてはいけないのである。
 当たり前のことなのだが、労働者や小ブルジョアは不断に支配階級の強い影響の下に置かれているため、人口ではごく少数のブルジョア階級の政党である自民党が支配政党でいられる。この当たり前の「真理」の具体的形態を「アベノミクス」支持という現象の内に見るのである。
 アベノミクス効果は出始め、ガソリンなどの輸入品の価格が上昇し、流通業・漁業・ハウス農業などが打撃を受け始めた。これは、製品への価格転嫁をしなければ立ち行かなくなるほどで、早期に価格転嫁をすべきである。だが、賃金が上がったわけではない以上、価格に転嫁するためには相当な努力と犠牲が必要である。
 流通業、漁業、農業などの小ブルジョアの一部に倒産する者が出る。小ブルジョア
 階級が自民党に投票してはならない理由である。

2. TPP加入は大ブルジョアの利益にすらならない。

 農業や医療などの分野では安全基準の「緩和」という悪化が進む。京都議定書すら批准しない粗野な米国基準の世界標準化が進行することはかなり理解され始めている。貿易外障壁をなくすという旗印の下、劣悪な製品の輸入が経済的強制力を持つようになる。製品として認められなかった物が、「安価な製品」という衣をまとうのである。
 農薬づけのカルフォルニア産ジャポニカ米が「日本米にひけを取らぬおいしいコメが日本米の半分の値段で買える」ということになり、産地表示の要らぬ加工米・せんべいなどの米製品や外食産業の飯などを席巻し、貧困層を中心に家庭にも浸透することとなる。高規格米として「発想の転換」をして、おいしい日本米を海外の富裕層に輸出することに活路を見出そうなどと思い違いをしている農家もあるが、こんなものはとるに足りない薄いビジネスにしかならない。
 こうした安全基準などの米国標準化=悪化の暴露はずいぶんと進み始めており、マスコミの一部も取り上げ始めている。だが、それが大ブルジョアの利益にもならないという視点で取り上げているところはない。
 まず、安全基準の悪化は、厳しい安全基準をクリアしている日本製品に不利に働く。厳しい安全基準をクリアするために要した技術開発費用を価格に上乗せできなくなり、電気業界がそうであったように、高い技術を持った安全な日本製品が駆逐される。商品として認められなかった劣悪あるいは粗悪な製品が安価なるがゆえに日本市場を席巻する。すでに多数派になってしまった労働者下層階級は、必ず粗悪でも安価な米国等の製品を買う。大ブルジョアにとってもTPP参加は利益にならない理由の第1がこの事情である。
 第2に、日本の輸出産業の大ブルジョアにとってはTPP参加は何の意味も持たないという事情がある。それは、すでに生産拠点を相手国等の内部に持ってしまっているので、わざわざ日本から輸出する必要もなく、むしろ海外で生産した日本企業の製品を輸入することが促進されるぐらいで、国内の生産体制がますます無用となり、お荷物になる。マレーシア産製品を逆輸入するなどの海外生産シフトを進めた三洋電機が、世界1の太陽光発電技術を持ちながらも倒産したのはまだ記憶に新しい。国内生産体制を「関東自動車」始め系列子会社の別の低賃金体制をつくることによって維持してきたトヨタもTPPによって打撃を受ける側に立つのに、「輸出企業だから有利になる」とでも思い違いされている。北米の工場をフル回転させ、日本に輸出させるよう圧力をかけられるのである。そうしなければ、お得意のリコール・ラッシュで米国市場から締め出されるのが本当に進行する事態のはずである。

3. 正体をさらけ出し始めた「アラブの春」なる米国の反イスラム策動

 「自由シリア軍」なる米国の手先の反イスラムテロ勢力に対し、米国が軍事援助していることを本稿は以前から指摘してきた。
 「自由シリア軍」が自前で武器を購入している体裁をとるようにしてきた米国は、その装いをとっているゆとりがなくなり、なりふり構わず直接に軍事的支援をしなければならないところまで追い込まれた。「アラブの春」の虚構が、実は米国によるアラブ世界の転覆活動であることが認知されはじめ、「自由シリア軍」が急速に人民から見放されはじめたからであろう。
 この窮地に、米国はまたぞろ「盧溝橋事件」をでっち上げ、シリア政府は化学兵器を使ったことにして、直接軍事支援に乗り出す口実にした。おそらく、米国が化学兵器を自由シリア軍に使わせ、それをシリア政府軍が使用したことにしたのだろう。ちょうど日本人女性ジャーナリストが自由シリア軍の支配地域で「政府軍」によって射殺されたように。
 米国のこうしたみえみえのウソはいつでも有効だった。親ブッシュのクエート侵攻の口実とした油まみれの海鳥。フセイン大統領を殺した子ブッシュのイラク侵攻の口実とされた大量破壊兵器の保有。こうしたうそはいつもジャーナリズム精神を喪失したマスコミのセンセーショナルなお追従キャンペーンで煽動され、効果を生んできた。
 安倍首相ははやばやとアラブ世界への敵対活動をする、自由シリア軍への援助という道を踏み出し、日本がアラブ世界で培ってきた信頼を失わせる道を歩み始めた。許せるものではない。
 民主党のひどさゆえにマシに見えてしまう自民党政権だが、決して自民党に投票してはならない。


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