共産主義者同盟(火花)

「国崎 俊 遺稿集」の発行にあたって

「国崎 俊 遺稿集」刊行委員会
2022年12月24日


 2021年、同志 国崎 俊 がその生を閉じて、1年以上が過ぎた。
 国崎は、階級闘争の現実に深く錘鉛を下ろし、共産主義革命の根拠と条件を探り続けた。革命的理論の構築に向けて国崎が積み上げてきたしごとは、古びた革命図式が無効を宣告されている今、改めて検証すべき内容に満ちている。

 60年代〜70年代、日本階級闘争は、〈蜂起・内戦・革命戦争〉の世界的な展開と直接結合することをめざした。そこで切りひらかれた地平を共産主義革命へとどう転化するのか、が鋭く問われた。しかし、この問いへの回答をめぐって、階級闘争は四分五裂状態を呈していた。そこには、帝国主義の反動・抑圧に対する民主主義闘争から「彼岸」の革命へといたる道筋のあれこれを結集軸とする「戦略・戦術主義の党」の限界が露呈していた。
 それに対し、われわれは、現実の運動の中に革命を準備することをめざし、「党の革命」を追求した。すなわち、資本主義の廃絶を直接の目的とするプロレタリアートの階級闘争を措定し、革命の条件―プロ独の準備を運動の課題とすること、その内容を新たな<綱領・戦術・組織>として掲げ、論戦と共同行動(その省察)を通じて新たなインターの質を持った単一党を建設すること、である。
 火花派創建の意義はここにある。国崎はその濫觴から中心に立ち続けた。そして、以降も階級闘争の変容・転態に向き合い続けた。
 世界資本主義市場を運動の場とする金融資本の力がますます強大なものとなる一方、80年代〜90年代、東欧・中国の民主化運動とソ連邦の崩壊は、これらの国々における社会革命に向けた「実験」・「計画」の破綻を明らかにした。しかし、帝国主義・資本主義と対決する運動は世界各地で展開され、その中に、民主主義を求めるとともにその(商品―商品生産―商品社会を基底とした)抽象性・形式性を乗り越えようとする志向が広がりを見せた。こうした情勢の中に、国崎は新たな革命の条件を見出そうとした。すなわち、民主主義を超える、運動の自律的な統一であり、資本主義社会―商品社会の実現してきた社会的結合を止揚する「実験」・「計画」を担うプロレタリアートの形成である。それは、火花派が2大会以降めざしてきた「新しい運動と新しい組織の建設」を方向付けるものである。
 国崎の理論構築は一貫性と体系性を備えている。だが、体系化それ自体が目的であったわけではない。それは、つねに共産主義革命という目的を明瞭に定め、資本主義のもとで結び合う多様な領野からの問いに答えようとしたことの現れである。また、国崎は、階級闘争における分界線を曖昧にする「流行の思想」を批判し、マルクス、レーニンの革命的論戦を復権するために機関紙「火花」誌上での理論戦を精力的に展開した。
 こうしたしごとは、検証のために広く開かれたものであり、国崎も新たな論戦を望んでいた。われわれは、その意義を継承したい。そこから、今の政治的社会的実践を省察し再構築する手がかりを探り出すことが可能だとわれわれは信じている。「国崎 俊 遺稿集」発行の目的はここにある。

 今回はまず1990年6月(106号)〜1991年1月(113号)にかけて連載された「商品―商品生産は廃絶できないか?」を遺稿集の第1弾として公開する。以降も今日的に見て検討すべき主要論文を選定し、順次公開していく予定である。




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