共産主義者同盟(火花)

「台湾有事」と中国・米・日

渋谷 一三
466号(2024年06月)所収


<はじめに>

 2024年5月23日と24日、中国は台湾島を一周取り巻く形での大規模軍事演習を行った。
 これは、頼 清徳 民進党政権の発足に対して、台湾への武力侵攻が十分にあり得ることを示して圧力をかけるとともに、実際、軍事侵攻の予行練習でもあった。
 これに対して米・日は6月、日本から台湾、フィリピン周辺に至る海域での大規模多国間演習「ヴァリアント・シールド2024」を予定している。
 これによって、「台湾有事」に日本は「日米同盟」に有機的に深く組み込まれ、「安保法制」改定とあいまって、米軍への攻撃に日本軍が出動する事態が現実味を帯びた。
 中・米日台湾間の軍事的緊張は今までになく高くなっている。

1.岸田政権の「台湾有事」無策

 岸田政権が取っている政策は日本の軍備増強・軍事費倍増の一点である。
 これは、米国からの要請に応えたもので、岸田政権の発案によるものではない。
 米国の要請に応えることで十分であると考えた結果であり、それ以外に日本が取りえる政策はない、と考えている結果である。
 軍事費を倍増することによって、中国の超音速ミサイルに対する防空システムを構築することが出来、それが、抑止力強化になると考えている。
 それで十分と考えている。
 日本の軍事費倍増が中国との非和解的対峙に段階を移すことになるという認識はなく、このことが中国に進出している日本資本の経済活動に及ぼす重大な影響など思いもよらぬ体である。
 米国は中国に日本のようにはべったりと進出などしておらず、非和解的対峙に照応する態勢をすでに取っているが、日本はベトナムやインドにシフトしていくなどのこともしておらず、個別資本の動きに追随している状態である。自分が何をしているのかを理解しておらず、「米国の要請」に応えることで良好な米日関係を維持できると思っている“能天気”状態。帝国主義国家としては失格なのである。
 軍事費を急遽倍増することによって、実は、国家予算は逼迫し、取れる経済政策が狭まっている。例えば円安に対する対応も無策になっており、ガソリンなどへの補助金も打ち切らざるをえなくなっている。
 物価は高騰、賃上げは大企業だけ、年金の物価スライド制などどこ吹く風。こども食堂は増える一方。人口の6割に達しつつある下層大衆は自公政権に見切りをつけた。裏金問題が主要な原因ではない。下層大衆の切羽詰まった怒りは、もっと深いところにある。生活が苦しくなっているのである。

2.習近平独裁政権と中国帝国主義

 天安門事件をメルクマールとして、中国は、共産党員が階級化し支配階級となった特殊な国となった。これ以降、中国は口先の社会主義=実は帝国主義ということで「社会帝国主義」と規定すべき国となった。
 これに先立つ中越戦争で、中国が実践的には帝国主義国家になっていたことが証明されていた。
 今日、中国は「南沙諸島」に滑走路を造ったり護岸工事を行ったりすることで、一方的に現状を変更し実効支配を始めている。この実効支配策動を阻止しようとすれば戦争状態になることは不可避で、フィリピンをはじめベトナム、マレーシアなど領有権を主張する近隣国家は抗議するだけに留めている。
 また、「一帯一路」政策によってスリランカを国家破産状態に追い込むなど、なりふり構わぬ帝国主義国家となり、口先の社会主義すら言わない。「社会帝国主義国家」から帝国主義国家になったと言える。
 習近平政権は、汚職追放闘争によって党幹部への恐怖政治を築き上げることに成功し、独裁政権になることに成功した。
 この体制をもって、香港の民主化運動を弾圧しきり、香港は完全に中国化した。
 これに学んだ台湾人民大衆は、国民党と決別し、民進党を選ぶことで習近平独裁政権との闘争を維持することを選択した。
 日本のプロレタリアートは、無条件に台湾民衆のこの闘いに連帯する。すなわち習近平独裁政権のあらゆる抑圧に反対する運動を展開し、日米帝国主義の「対中戦争、辞さず。」とする軍事路線に反対する。

3.中国と米国および日本他との帝国主義的利害対立はどのようなものか

 台湾海峡の航行の自由が失われることはそれほど決定的なものではない。多少航路が長くなる程度のことで、この利害を守る為に戦争をするほどのことではない。南沙諸島が中国に編入されることは、国際秩序の維持という点から全く容認できない。
 実は同じこの脈絡から台湾という大きな島が武力で中国領になることは許せるものではない。
 だが、中国市場に参入するために『1つの中国』を認めてしまった以上、米・日・独・仏・英の側に論理的整合性はない。中国は国共内戦の停戦状態にすぎないのだから、むき出しの軍事力こそが、この停戦状態を維持させるか否かを決定する。
 この点で平和主義での戦争反対・軍事費増加反対の日本共産党などの主張は現実味がない。米日帝国主義の軍事力が中国帝国主義の台湾武力侵攻を押し留めているのは一方での現実である。帝国主義間矛盾であり、一触即発の「戦争の時代」を作っているのである。
 日本のプロレタリアートもまた、帝国主義間戦争に動員されることを拒絶し、帝国主義戦争に反対し、軍事費の増加に反対するが、それは決して口先の願望からする平和主義から来るものではない。
 自公政権は先島諸島に自衛隊の基地を新設・増設しているが、中国が日本を攻撃対象としない限り米軍基地も含め日本の基地から攻撃用ミサイルを発射することはできない。あくまで迎撃しか出来ない。基地の新増設とミサイル配備は軍事的現実性を持たない軍事費の無駄遣いなのである。
 中国の台湾への武力侵攻の可能性はあっても、間違っても中国は日本の基地を攻撃したりはしない。米・中直接戦争は、中国もまた望むところではない。
 台湾の半導体を主力とするIT産業の争奪が今日の中国の「台湾武力侵攻」の動機ではない。
 中国は、トランプ時代の米中貿易戦争を契機に資源やサプライ・チェーンを武器にして他帝国主義国家の譲歩・屈服を引き出そうとする戦略を取るようになったが、逆に中国包囲サプライ・チェーンが構築されたり、中国自身が他帝国主義国家の市場を失いたくない事情があったり、ロシアに依存しても足りない資源があったりすることで、この戦略を取ることが出来切れていない。ブロック経済時代の帝国主義あるいはレーニン時代の帝国主義とは明らかに性質が異なっているのである。
 ソ連崩壊後西側帝国主義国家がわが世の春を謳歌し、グローバル経済が発展したが、中国の帝国主義としての登場によって、歴史的反動としての反グローバリズムが現出している。
 台湾のサプライ・チェーンが中国に奪われることは他帝国主義国家にとっては一時的に打撃になるが、中国にとっても手に入れたサプライ・チェーンによる過剰生産のはけ口としての市場が必要である。この点からも、白黒はっきりすることのない現実が続いており、台湾のサプライ・チェーンの争奪が戦争の動機足りえない。このことがまた、米中が直接戦争に入ることをよしとしない物的根拠となっている。
 独仏英の西欧帝国主義国家は、中国市場に入りこんで利益を上げており、この関係を持続させる以外の動機は存在しない。これが中国の強行姿勢を生んでいる根拠の一つになっている。

4.日本の人民大衆の闘い

 日本の軍備増強・軍事費倍増に反対する。
 軍備増強・軍事費倍増は軍事的には意味を持たず、ただ単に中国との軍事的緊張を高めるだけだからである。したがって、全ての野党がこの見地から反対の運動を作ることを促進する必要がある。
 習近平独裁政権の打倒に連帯する。
 台湾・南沙諸島(スプラトリー諸島)をはじめとする領土拡張の帝国主義的野心が世界の平和を破壊する一因となっている。(ロシアへの加担もこの一つ)
 中国人民大衆の抑圧から解放されるための闘い、香港・台湾人民大衆の反独裁民主化運動と日本の人民大衆の利害は完全に一致している。




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