共産主義者同盟(火花)

有り得ない「新しい資本主義」―「維新」が躍進するわけ

渋谷 一三
464号(2023年07月)所収


1.有り得ない「新しい資本主義」

 岸田氏は自民党総裁に立候補する段階から、しきりに、「新しい資本主義」を唱え始めた。この言うところは、所得の再分配を図るということである。
 所得の再分配といっても、国家が出来ることといったら、国家予算を使って低所得層にいくばくかの分配を図ることぐらいしか出来ない。たかが知れている。
 またグローバル化によってケインズ主義は死滅した。

 とは言え、1兆円規模になる「ばらまき」の財源はどうするのか。
 再分配という理念からすれば、高額所得者や大企業から徴税し、それを低所得層に「こども手当」だの「給食費無料化」だの「高校、大学の授業料の無償化」などといった形で再分配することになる。
 だが、高額所得者や法人への課税は、小泉内閣時に、「諸外国と同じレベルに下げないと企業も高額所得者も外国に登録してしまうので、却って税収が減る。」との理屈で引き下げられた。
 この時に、派遣労働者が生み出され「中間層」の没落が始まった。
 これが今日の「中間層のやせ細り」を生み出した根拠だった。
 だから、「分厚い中間層を生み出す」(岸田)ためには、高額所得者や法人への累進課税を復活させるしかない。だが、そうすれば企業は本社を海外に置き、高額所得者はタックス・ヘブン(免税天国)国に所得を移してしまう。
 堂々巡りである。

 そこで自民党がとっている策は国債の大量発行である。いくら発行しても大丈夫だとする森永氏などの論客を使ってその雰囲気をも醸成しようとしている。
 これに対して「維新」は「行財政改革」――主に公務員の賃下げ――によって財源を捻出する方法をとった。それは、維新が国政ではなく、地方公共団体の首長しか取っていないために強いられて行財政改革から財源を捻出しかなかったという事情にもよるが、債権の発行=将来からの借金という方法を採らなかったために、力強く「再分配」政策を押し進めることが出来た。
 中学校での給食開始と無償化、高校の授業料の無償化(私学も含めて!)、大阪市立大学と府立大学の統合に合わせてこの大阪公立大学の授業料の無償化などが、それである。

 対して自民党は、国債の大量発行(日銀引き受け)と日銀のマイナス金利政策を推進することによって、正常な経済政策をとることが出来ない経済構造を作ってしまった。この構造からの脱却の任務を課せられた植田総裁ではあるが、打つ手がなく、少しずつ変化させることを通じてしか政策を打てない窮地にいる。

 維新が得票を伸ばし、自民が漸減していくのは、この違いに由来する。

2.日銀のマイナス金利政策は低所得層には何の恩恵も生まない。

 低金利で恩恵を受けることがあるとすれば、住宅ローンを組むときぐらいなものだ。低所得層はとうに住宅購入などの世界からはじきとばされており、低金利政策など全く関係ない。

 これに対して、例えば高校授業料の無償化といった維新の政策は直接に低所得層を助ける。低所得層の子たちは、幼児期から一貫してあらゆるところで困難や劣悪な条件下に置かれてきた結果、公立高校に入れない学力の生徒が多い。高校に進学させようと思えば私学しかないが、これが月5万円以上の授業料を取られる。だから進学を断念させるしかない。
 こういった階層にとって私学の授業料が無償化されたことは画期的なことだ。
 なんとか高校に進学させられる。
 「維新」が躍進するゆえんである。




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