共産主義者同盟(火花)

立憲民主党 第3党への転落を決めた代表選

渋谷 一三
452号(2021年12月)所収


<はじめに>

本稿の分析が正しいことを証明するため、来る参議院選挙での立民党の後退を予言しておく。

1.地方票が小川氏に入れば、代表は小川氏になっていた

 その小川氏が地方票でまけたのは、立民党が労働者上層部とプチブルの党になってしまっていることを反映している。
 労働者上層部から見れば、連合との良好な関係を保つことができるのが現実主義であり、共産党との共闘は労働運動のヘゲモニー争いで常に対立してきた労組幹部にとっては感覚的に受け入れられない非現実主義と映る。
 労働者下層の支持をも取りつけた枝野氏と福山氏・長妻氏による立憲民主党結党であったが、結党したばかりゆえに、地方組織は全くなく、政権奪取を急いだ枝野氏による国民民主党解体吸収作戦により、地方組織は旧社会党からくる「組織労働者」の匂いのプンプンする旧態依然とした組織をそのまま取り込むことになってしまった。
 このため、4候補者のなかで唯一下層階級にも目を向け続けていた小川氏を理解する能力が地方組織にはなかった。有体に言えば逢坂氏に代表される旧社会党の反戦平和を唱える以外は全く何も考えていない怠慢な労組幹部体質が地方組織の体質だった。
 枝野氏が政権奪取を急ぐあまりに、国民民主党に軒先を貸したため、母屋を乗っ取られたのが今回の代表選の結果である。

 兎にも角にも、泉氏が立民党の代表になったことによって、立民党は、「“急場しのぎの立民党”に負けた国民民主党」になってしまった。
 立民党に入れてもらった議員の方が僅かだが立民党議員より多くなってしまった「水ぶくれ状態」により、社会の下層に訴える言葉を持ち始めていた「旧立民党」の萌芽は摘み取られてしまった。
 人格的にも旧国民民主党を代表する泉氏が、名実ともに立民党を旧国民民主党にしていくことだろう。このままでは、この党に未来はない。

2.維新は、公務員(労働者上層)に打撃を与えることで、下層の鬱憤を晴らし熱狂を組織してきた。

 泉立民党は。連合との関係を強化するとともに共産党との共闘を薄める路線を採る。こうすることによって、選挙時の足を確保し、「党の足腰を鍛える」つもりだ。
 選挙の時のポスター張りや「○○をよろしくお願いします。」の宣伝カーの調達・人員確保などを労働組合員がやってくれるからだ。宣伝カーなどは、労組が自前で持っている。資金面でも大助かりなのである。
 自民党などはこれが無い。宣伝カーは県連が持っている程度で、圧倒的に数が少なく、自前で調達するしかない。また、手足のように動いてくれる労組員などがいない為、運動員を「ボランティア」で集めるしかなく、実際は金で雇う公職選挙法違反をひっそりとやるしかなかったりする。
 選挙カーの調達費用を含め、「金のかかる選挙」「公選法違反」の選挙になる構造的弱点を抱えているのである。
 泉氏程度の「現実主義」では、連合の支持を取り付けることは、「党の足腰を強くする」現実主義に映るが、前々回の“希望の党騒動衆議院選”で負けたのは、労組と密着した国民民主党である!

 維新はどうか。
 下層労働者の労働強度と比べて遥かに楽なくせして賃金は倍以上もある公務員を叩くことで、下層のストレスの発散になり、下層の熱狂を引き出すことが出来る。
 下層大衆は、維新の首長を選ぶことで、けったくその悪い公務員を叩く痛快劇場を毎日ただで見ることが出来るのである。
 その上、公務員の給料をカットすることで中学校の給食が実現し、私学授業料がタダになる改革が実現するというのだから、至れり尽せり、言うことなし。
 敵を作り、敵を叩くことで下層の熱狂を引き出すファシズムの面目躍如という所だ。

 さて、泉君は維新の敵である労働者上層部(連合)とくっついて維新に勝てるとでも思っているか。青春時代に「政治家になりたかった」夢を育み、25歳で衆議院選挙に出、党首選挙に出るまでになったという生徒会選挙の立候補演説のような観念的無内容なことを党首選挙キャンペーンで展開していた様は、『維新』の構造的深みと比べると慄然とする。
 さらに、党首となった後の演説では、『国民とともに』とか『国民に寄り添った』などのキーワードを多用している。「そういうあなたは国民ではないのですか?」と揶揄したくなる上から目線だ。これもまた抽象的で何も言っていない無内容な言葉の羅列である。
 醜悪なことの上塗りに、落選した辻元清美氏が、維新の橋下氏を気取ってか民法2局に出演し、にやにや笑いながら立民党党首選についてコメントし、参議院選挙で政界復帰をする欲望をにおわす発言をしている。ピースボードにも帰る所はないのだろうか。
 これでは、小選挙区でも比例復活でもダメだった自民党の石原氏が内閣参与として観光産業回復のための政策に生意気にも助言をするだけで高額給与を食む、岸田氏のお友達人事を批判することもできない。

 党内の厳しい闘争を経ない限り立民党の衰退は不可避である。




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