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コロナが明るみに出した大ブルジョアの支配システムの膠着と無力化
―下層階級にのみ支援出来る体制がない―

渋谷 一三
446号(2021年1月)所収


<はじめに>

 グローバル化の進展によって生み出された大量の非正規労働者、「火花」はこの層を1980年代初頭に“労働者下層”と名付け注意を惹起した。
マスコミも遅れて1990年台に入ってフリーター層と名付け、趣味で正社員になりたがらない人々のように描いた。
この間にバブルという言葉が定着させられ、その後のバブル崩壊と“失われた10年”が始まった。
この期間に、竹中・小泉改革によって大量に生み出された労働者下層を、マスコミはフリーターから非正規労働者とネイミングを変えた。
さすがに、本人の意思で選びとって下層労働者になったと強弁することが憚られたからだ。。

今回の新型コロナによる支配階級の休業強制と休校強制によって、経済は大打撃を受け、まさに、こういう時のために生み出された派遣社員や非正規労働者、それに実質上最低賃金労働者であるアルバイト学生らが、真っ先に窮地に陥った。
だが、自公政権はこの層に税を通じた再配分を行うことが出来ないでいる。
特に公明党は、その支持層の下層労働者と小規模商人に税を分配したいはずだが、一律10万円支給の野党提案を採用させた以外には、その支持基盤に支援金を手渡すことが出来ず、時短営業で倒産する飲食店を見捨て、急増する自殺するしかない窮乏世帯の自殺者を見殺しにしてきた。
救済しようとする意志がないのではなく、救済するシステムがないのである。
今の自公政権が大ブルジョアのための統治システムになりきっていて、大量に税の無駄遣いをしているにも拘わらず、貧しい人々のところには税が回らないようになってしまっているのである。

1.GO TO TRAVELは、こんな時節に旅行に行ける富裕層に税を大量投入し、ペンションなどの弱小宿泊施設の客を奪って一流ホテルへの客を増やした。

旅行に行く方も富裕層。旅行客を受け入れる方も大資本の宿泊施設と旅行斡旋業者。そして、コロナ・ウィルスを全国に撒き散らかした。

2.GO TO EAT で感染を拡大させ、時短営業の強制で大量の税を投入するも、倒産・廃業・休業を回避することが出来ない。

この政策も税を大量に投入するが、一番必要な、倒産に追い込まれそうな飲食店には支援金が届かず、材料納入業者や関連産業の業者には支援金が一銭も届かない。
必要な所に支援金を届けるシステムがないのである。
そればかりか、支援金が必要でない昼間中心のファミレスなどの業態には“協力金”が入ってしまう。
システム障害が起きているどころではなく、従来あるシステムがすべて富裕層に使い勝手がいいように作られていて、貧困層にターゲットを絞って施策を行うシステムがそもそも構築されて来なかったのである。
GO TO EATが、小ブルジョアジーにすら使い勝手の悪いシステムでしかない現実をあぶり出してしまった。

3.「内向き政党」によって資本主義の危機は克服できるのか?

米国自動車工業のデトロイトは、膨大な数の自動車関連労働者の支持によって、伝統的に民主党の地盤だった。
だが、グローバリズムによって米国系自動車企業が実質的にドイツ系企業との合弁企業に近くなることによって、車台の共有化や新車開発の共同化、様々な技術の相互供与などによってスリム化し、国際競争力を維持した。
 スリム化したということは取りも直さず、米国内労働者の解雇や関連企業の倒産などを不可避にした。こうした、「犠牲となった」階層は、今回、トランプ候補支持に回った。
 だが、トランプ候補が当選したところで、GMやクライスラーやフォードなどと、ダイムラーやフォルクスワーゲン社などとの入り組んだ提携関係がなくなるわけではない。よしんば、トランプ政権のような政権が数十年続き、各国とも内向き政党が政権をとり、その結果、経済が国民規模に収縮するというケインズ主義の時代の経済になったとしても、中国やインドの台頭その他の諸国の経済発展という現実が生み出される。そのため、内向き政党による国民経済の復活がかなったとしても、その経済規模はかつての経済規模よりはるかに小さく、貧困との戦いが絶えない。
 実際には、各国が内向き政権になったとしても、それは例えばTPPの批准をしないなどの<これ以上のグローバル化の進展の拒否>することが精一杯である。であるがゆえに、各国で内向き政権が誕生するということはあり得ない。一部の矛盾が集中した国で「内向き政党」が政権をとることがありえるだけのことである。

 農業を見ても、同じことが言える。
 米国がTPPを批准しなかった場合、圧倒的に余剰農産物を抱えている米国の農業は、国内需要を満たすだけの規模へと縮小せざるを得ない。
 他方、日本のようにTPP批准によって大量の安価な外国産物が流入してしまう国では、自国農業が均衡状態を見出すまで縮小するのを回避できるだけのことで、農業生産が増大するわけではない。自由貿易で利益を得るセクターと自由貿易で損害を受けるセクターとの国内の闘争が起きるだけのことであり、その結果、不安定な政権が生まれるだけのことで、各国で軒並み「内向き政権」が生まれるわけではない。

 「内向き政権」によって資本主義の危機が克服されるわけではないばかりか、各国で軒並み内向き政党が勝利するわけですらない。

 このように、自然発生的には、資本主義の危機は克服されることはないのである。

4.人間の能動的実践としての資本主義の危機の克服こそが社会主義の措定である。

―以上―


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