共産主義者同盟(火花)

大国主義・覇権主義の独裁国家中国
―なぜ独裁国家中国が誕生したのか―

渋谷 一三
444号(2020年12月)所収


1.大国主義・覇権主義の習近平政権

 「大国にふさわしい処遇を要求する。」と自ら語っている習近平政権ゆえ、中国が大国主義になってしまっていることの論証を省くことが出来る。
 中国は、『中国は永遠に大国主義にはならない。』『覇権主義に断乎反対する。』と世界に語り、そのことによって非同盟諸国をひきつけ、非同盟諸国会議路線を牽引してきた。
 今やこの毛沢東・周恩来体制とは真逆の習近平政権が成立するに至っている。

 習近平政権は、明朝時代の中国版大航海時代に南沙諸島を発見したとして、スプラトリー諸島の領有権を主張し、同じく領有を主張する近隣のベトナム、フィリピンやインドネシア、マレーシアを無視して、一部の島をコンクリートで埋め立てて軍事基地を建設してしまい、実効支配を主張している。これは覇権主義そのものである。
 また、日中ともに岩礁としてしか認識していなかった江戸幕府・清時代の尖閣諸島(魚釣台)の一方的領有権を主張し、領海侵犯を公然として、日本を挑発している。これも、覇権主義である。
 また、大陸棚は自国のものであるとの国際法上認められていない論を振り翳して、東シナ海の海底油田開発を進めてしまった。これもまた、覇権主義である。

2.2027年までに台湾を武力侵攻し、領有しようとしている『戦争の源』国家

 今日、中国は、戦争の震源地である。
 香港の民主化運動は完全に制圧されてしまった。民主派議員ですら立候補を認められず、選挙制度は完全に形骸化した。
 1国2制度の欺瞞は払拭され、香港は完全に中国に領有された。台湾もまた中国の一部であることになっている。
 日本は先陣を切ってこのことを承認し、その後国際的に「台湾は中国の一部である」ことを認める国際環境を作ってしまった。この結果、中国が台湾に武力侵攻しても、それは内戦である、と、言い張れる環境が出来あがってしまった。
 香港の次は、台湾の併合・領有が習近平政権の至上命題となっている。

 台湾併合を目標に設定し、軍備の近代化とICBM(大陸間ミサイル)装備の潜水艦の展開やマッハ5の高高度からレーダーにかからない超低空に急降下し滑空する新兵器の実戦配備などを進めている。
 最悪、米国との戦争をも想定に入れた台湾武力侵攻を着々と準備している。
 台湾武力侵攻はにわかに現実味を帯びている。

 資本主義が恐慌を起こし、市場の確保を巡ってブロック経済化することによって、2度にわたる世界的市場再分割戦を惹き起こした。
 資本主義が戦争の源であり、社会主義はその克服を目指して地上に出現したはずだった。その「社会主義」が今や戦争の震源地になっている。
 どうして、こんなことになってしまったのか。

3.日本新左翼独特の反スターリニズムで説明した気になっている愚

 確かに、毛沢東は最後までスターリン同志と呼んでおり、スターリニズム批判という体系化されたイデオロギーなど持ち合わせていなかった。だから、反スタ主義で現中国までの「変質」をナデ切ることは可能である。
 だが、新左翼なる用語とその運動が世界的潮流として成立したのは、そもそも、フランスの毛沢東の再評価に依拠した運動からだった。それまでの、ソ連およびコミンテルンを正統とする「社会主義運動の支配」から、運動を解放する革命運動として新左翼運動が誕生したのだった。
 この背景にはチェコの民主化運動(ソ連が解釈権から何から全てを握っている社会主義運動の否定)を弾圧する為にソ連軍が侵攻した事件=「プラハの春」や東欧の各国がソ連の利害に引き回されている現実への覚醒があった。
 ところが、特殊日本の新左翼は、一国社会主義建設が可能であるというソ連のテーゼ(こう立てなければ、革命を起こしてはいけないことになる)を、一時的過渡的なテーゼと措定し直すことにより、スターリンの支配下で起きた独裁と粛清の嵐を根絶していく「正しい」社会主義運動を模索し、反スターリン主義の国際共産主義運動の再評価の体系を生み出した。
 この作業自身は無駄なものではなかったが、社会主義運動の支配・多様な運動の否定・解釈権の独占などの現実の問題の解決には無力だった。
 このことを認めずに、スターリニズムだからダメだったのだと繰り返しているだけでは、『スターリニズムを克服したとして、どうすることが社会主義なの?』という問いに答えられない。

4.階級独裁という概念は、それほど大きな概念でもなければ、根底的概念でもない。

 マルクスが階級独裁という概念を提出し、労働者階級の利害を常に意識するよう警告した。
 今に例えるならば、米国民主党であっても米国共和党であっても、資本家階級の支配の仕方をめぐる相違にすぎず、うまい支配方法を経験的に探る装置として各政党があるといってよい。
 このような状況に警鐘をならし、労働者階級の利害を見失わないように「ブルジョア階級のどれかの政党によって支配されているにすぎない状況」=いわばブルジョアという階級による独裁、という現実を認識するための概念であった。
 だから、プロレタリア階級による独裁という対概念は、いろいろな政党があってもどれもプロレタリア階級の利害を巡る相違(多様性による階級独裁を維持する保険)にすぎないというものである。
 それが、一党独裁を意味するという解釈が正当とされた。それゆえに、党公式見解を決定する機関や個人の独裁が正しい、とされる解釈に発展するのは当然と言える。

 階級独裁が出来ていれば、党派の多様性をもってして、いわば試行錯誤的に正しい現実主義を探り当てて行く。これが民主主義の概念である。マルクスは、民主主義の徹底が社会主義であるといってもよいと述べている場合もある。
 全知全能の神を否定しているマルクス主義であってみれば、無謬の党やシステムなどはあり得ないことを真っ先に承認しているのであって、人類の主体的能動的実践として経済活動も再措定しようとしているのである。
 物質世界の運動の結果に翻弄されるものとしての経済活動から、方針を決め、実践し、過ちを修正し、再度実践する。こうした螺旋的発展を、弁証法的世界観として定義してきたのである。
 無謬の党など、マルクス主義とは無縁な観念なのだった。
 だから、党派闘争に暴力概念を接木させた途端に、日本の新左翼を壊滅させた『内ゲバ』が必然化されたのだった。

 中国共産党もまた、ソ連が支配していたコミンテルン運動にあれほど激しく実践的に反発して止揚してきたにもかかわらず、林彪事件を契機に党内民主主義の作風は消滅し、今日の「訳の分らぬ宗教」集団としての中国共産党が成立していった。
 米国の反革命・侵略戦争に断固として戦い続け、最終的に歴史上初めて米国に勝ったベトナム労働党に対して、中国は越境して戦争を挑み、撃退されるまでに「変質」してしまっていた。
 文化大革命という熾烈な党派闘争を仕掛けて、ト小平派と戦った毛派だったが、4人組の理論的混乱もあいまって「走資派」=ト小平派に敗北した。このことが、ベトナムとの戦争の直接的原因ではあったが、毛派もまた党内別派を認めなかった「プロ独派」だったこともあいまって、敗北した毛派へは徹底した血の弾圧が加えられ、「走資派」が完全に勝利した。
 これが、天安門事件や香港事件に必然化させたことはいうまでもない。
 中国共産党という特殊な集団が階級化し、この特殊な階級が政権を持ち回りしている異常な独裁国家が誕生した。
 このことの総括抜きに、スターリニズムなる深遠化され神格化されたイデオロギーで全てを説明しようとする愚を、いい加減に止めなければ、新左翼の復活はありえないだろう。

・香港の民主化運動の殲滅を許さない

・台湾の独立運動を断固支持する

・中国の台湾侵攻を阻止しよう




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