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世界の多数派=反米派と武力対決する道を進む危険な政治家安倍晋三A
―戦争犯罪の道を歩む公明党―

渋谷 一三
399号(2015年7月)所収


<はじめに>

 「安保法制整備」が米国の要求によって、2014年から諮問会議を作って答申させて始まったのは衆人の認めるところです。
 戦争犯罪人で後に赦免された岸信介を祖父にもつ安倍晋三が、岸信介が処刑されていれば自分の存在そのものがなかったという個人的理由から、歴史を歪曲して解釈し、祖父を肯定するという結論にそって歴史観・価値観を構成する思春期を送ったことが個人史に留まっている間は無害であったが、この少年が首相になったことによって、個人の誤謬に留まることができなくなり、大きな害悪となりました。
 安倍晋三がこの個人見解に純粋にこだわるのならば、まだよかった。米国の歴史観による断罪を拒否し、米国も侵略戦争を行ったではないかときちんと抗弁し、米国の要請に従って「集団安保」体制をとるなどという国辱は断固として拒否するはずだからです。
 ところが妙なところで「おとな」な安倍晋三は、内心では反米のくせして、米国の要求を丸呑みにすることによって中国の脅威と対抗するという戦略を選び、自公の多数決によって法案を可決する道を選んでいます。
 自民党は全く矛盾しているのです。
 日本が再び後発帝国主義として台頭してくるのを阻止するために、言い換えれば日本を骨抜きにするために、米国は9条をはじめとする「平和憲法」を日本に押し付けた、というのが自民党右派の共通見解であり、綱領的立場であります。
 だから、米国の要求にしたがって「集団安保」体制を作るというのは国辱として断固排除すべきなのであります。
 だが実際は、米国の要求を可能な限り最大限丸呑みにして中国と対抗しようというのですから、「自主憲法制定」の綱領的立場と真逆の動きであり、矛盾です。
 
 なのに、なぜゴリ押しをして、法案の強行採決をしようとしているのか。

1.すでに日本の軍事費を凌駕している中国の軍事費

 中国の軍事費が日本の軍事費を追い抜いてはるかに巨額になることができたのは、他ならぬ日本のおかげです。
 日中国交回復以後、日本は先陣を切って中国に資本輸出をし、現地に工場を建設しました。それは、1972年にニクソン米大統領が日本の頭越しに電撃的に訪中した衝撃のせいでもありました。
 この、日本の「経済進出」によって、資本のなかった中国に、日本という外資が入り企業を立ち上げてくれ、利潤を吸い上げさせるという代価を払いさえすれば技術移転もしてくれたのです。この結果、中国は無一文から経済的離陸を遂げ、その後出遅れを取り戻そうとする欧米資本の洪水のような資本投下によって、GDPも日本を追い抜き、日本より多額の軍事費を計上することができるようになったのです。
 端的に言えば、日本の「エコノミック・アニマル」(当時の流行語)ぶりが、中国を軍事的脅威の大国にしてしまったのです。
 毛沢東が生きていた当時の中国は、再三、「覇を唱えない。」「大国主義に反対する。」
 「中国はいかなる大国にもならない。」と声明していました。それが今日のような大国主義丸出しの国家に変質するとは想像していなかったのかもしれません。だが、それは、あまりにも無自覚な言い訳というものです。
 中国を今日のような危険な大国にしていったのは、他ならぬ日本を先頭にした資本主義なのですから。自分で中国をそのような国になるように仕向けながら、こんな危険な国になるとは思ってもみませんでしたというのは、通用しない言い訳というものです。
 実際、中国では資本主義の復活と闘争するとして文化大革命という実質的内戦が戦われたのです。そして結局、走資派が勝利し、中国に国家独占資本主義体制が構築され、今日、一握りの共産党幹部が一国を支配する特殊な資本主義国家が誕生したのです。
 日本のブルジョアジーは、「経済進出」を始めた時点で今日の中国の堕落ぶりを予定しておくべきで、自ら中国をそのような国家になるように策動しながら、そうなることを想定していない能天気ぶりを恥じるべきであります。
 
 ところが今日、安倍派などの右派は、慌てふためいて「中国の脅威」を喧伝しています。経済的利益を収奪することで一貫するのであれば、日中貿易をもっと増やして相互依存経済体制にしてしまい、交戦できないようにしてしまうべきであります。まともなブルジョアジーであるならば、1972年の時点から一貫してこの方針を貫く決意を持っているはずです。この暗黙の了解すら構想出来ずに「経済進出」をしたというならば、日本のブルジョアジーのレベルはかなり低いということになります。
 別に慌てふためくことはなく、一貫するシナリオならば、ドイツのように侵略を反省し、中国と友好関係を築きながら経済的うまみを吸いつくし、もう一段の資本主義化=中国民主化策動をやるべきなのです。
 逆に、中国を軍事大国にしたくなかったのならば、早々に資本を引き揚げることによって中国経済にダメージを与え、引き揚げた資本をベトナムやタイやミャンマーなどのより労賃の安い諸国に再投下すべきなのです。
 要するに安倍政権の政策全体が、ブルジョアジーとしての一貫性に欠けているという根本的欠陥を有しているのです。このことの反映が、「右往左往ドタバタ対米追従政権」という現象としてあらわれているのでしょう。

2.米国の要請を丸呑みしているだけの「安保法制」

 チュニジアの政権転覆活動を皮切りに、ここを出撃拠点にして、その隣国であり本命の標的であるリビアのカダフィ政権転覆活動を見事に成功させた米国だった。だが、『アラブの春』と銘打った作戦が、エジプトの一青年によって思わぬ波及をしてしまい、「長期独裁政権を更迭し、民主主義の装いをほどこした、人気のある新政権を樹立するはずだった米国の目論見を越え、イスラム原理主義の一派である「ムスリム同胞団」の大統領が普通選挙で誕生してしまいました。
 この、誤算だったエジプトには、その後のムバラクの復帰と同胞団大統領の刑事訴追という滅茶苦茶なゴリ押しというお粗末な脚本により、親米傀儡政権に復帰させたものの、反イスラエルのアサド大統領を放逐し親米傀儡政権を樹立するために作った「自由シリア軍」がアサド政権を打倒することが出来ずに内戦化し、イスラム国を生むに至らせてしまった。
 米国の誤算の二つめと三つめです。
 自由シリア軍なるものへの工作資金は多額に及んだだけではなく、内戦化による軍事的負担も大きくなり、再びイラクに投入せざるを得なくなった米軍の戦費も増大し、戦闘意欲のないイラク傀儡政権軍の維持費用もかさんでいる。
 リーマンショックによって経済的大打撃を発生させてしまった米国は、戦費削減を至上命題とするウォール街の支持と援助によってオバマ政権を誕生させました。イラクから米軍撤退を実現したはずのオバマ大統領でしたが、パキスタンでオサマ・ビン・ラディン氏を殺害し、リビアで核廃棄に応じたカダフィ氏を騙し打ちで殺害したまではよかったものの、『アラブの春策動』の副産物として「イスラム国」なる巨大な魔物を出現させてしまい、収拾のつかない事態に陥り、軍事費も再び増大の一途をたどっている。
 リビアの核武装を解除するという目的を遂げた後は、オバマは核削減のかの字も言わなくなっている。
 
 このような時に、「尖閣列島の日本の領有権を承認してくれ。」と安倍政権に泣きつかれたのでした。
 冗談ではない。収拾のつけようのないイスラム国を生み出してしまった失政によって米国民主党は上下両院で少数派に転落している上、共和党政権に復帰したところで、イスラム国という魔物を中心とする帝国主義秩序の崩壊とテロや武装闘争の多発という事態をどうすることもできない。
 そのような時に、極東のイスラエル化を方針とした安倍政権が誕生してしまったのです。米国が民主党だから冷たく「領有権争いには米国は関与しない。」とあしらわれたわけではない。戦費の削減を至上命題として誕生させたオバマ政権が戦費の増大という結果を招いてしまったのです。日本の代わりに中国と戦争してあげるなど、とんでもないことです。
 再度安倍氏に泣き付かれて、安保の双務協定化と引き換えに出された声明が、「尖閣列島は日米安保の適用範囲にある。」という声明でした。日米安保の双務協定化という構想は、共和党のアーミテージ・民主党のナイ両氏の「アーミテージ・ナイ・リポート」によるものであり、ここで述べられているペルシャ湾の掃海などは日本単独でもやれという例えは、応用すらできない政治家安倍晋三の口から例えとして執拗に、文脈から突出してさえ語られている。
 このように見てくると、安保法制整備なるものを必要としているのは、安倍派だけであり、安倍派が日米安保の双務協定化を呑まなければならなくなったのは極東のイスラエル化戦略をとるという、戦略的失策の必然的結果であることが分かります。
 
 安倍派が決して具体的に言うことのない「国際環境の変化」とは、以上のようなことであり、日本側からみれば「日本の、極東のイスラエル化」であり、米国側からみれば「これ以上の戦費の負担には耐えられない」という変化であります。
 ただそれだけのことです。
 米国に頼って周辺諸国との戦争を繰り返すイスラエルのように、中国や朝鮮、そして韓国とすら戦争をして「自虐史観」を押し付ける周辺諸国に毅然とした態度を取りたいのです。米国にはお追従をして、周辺諸国には「毅然とした態度」を取りたいとする屈折した民族主義、民族主義とは言えないアジア蔑視・脱亜入欧の奴隷根性の焼き直しという矮小なものが安倍晋三思想の正体だったのです。

3.「国際情勢の変化」と言っていることの本音

 その第1は、前項で見たように、米国が戦費の増大に耐えられる状況にはないということでした。
 その第2は、「極東のイスラエル化」という安倍派特有の誤った戦略です。
 この誤った判断をもたらした重要な原因は、安倍氏個人の個人史にあります。
 祖父が戦後日本の一番激しい反対にあっても国会を通過させた「日米安保同盟」が、今日反対運動に支持を与えていた層の一部をも取り込んで、「正しい判断だった」とする風潮があるからです。
 安倍晋三は自らの出生を肯定したいという全く個人的な事情によって、それも歪んだ遺伝思想によって、60年安保闘争を弾圧し切り押し通した岸信介の行動と対米追随思想を理想化したのでした。
 社会主義運動が世界革命を達成できないまま変質しスターリン主義という魔物を生み出して終わり、歴史的進歩を遂げられなかったばかりか、資本主義の廃絶という課題を解決する歴史的物質的条件が成熟させることができなかったことを反映して、思想的にも資本主義を廃絶する方途を生み出せていない。
 こうした歴史的限界を反映して、ソ連邦の崩壊という歴史的限界を正しく反映した結果が生み出されたとは言え、この崩壊の後に、社会主義・共産主義運動を構築し直す力量はどこにもない。これが、現状です。
 他方、資本主義の方も死滅しかかっており、バブルの生成と崩壊を繰り返すしかない状況に陥っています。資本主義が歴史的進歩を担っていた時代も終わってしまっているのです。
 たまたまそういう状況だったので、「日米安保が良かったのかもしれない」という動揺が生じただけです。歴史的反省を表明して、安保ではなく、中国や韓国を含めてアジア共同体(AU)を作る道もあっただろう。EUは交戦した独・仏を中心に英国も含めて、全て資本主義国(帝国主義国)で実現したのです。
 安保同盟による対米従属国家として歩んで来てしまった以上、それが現実主義的に見えてしまうのは当然の理屈です。AUを作って来ていれば、今日の中国の姿も、また、無く、安保条約による対米従属という姿は、想像することも難しくなっていたことでしょう。
 要するに現実化した路線が現実主義に映ずるに過ぎないのです。
 また、今日の中国の圧政の現実、朝鮮民主主義人民共和国の圧政の現実、ソ連邦と東欧諸国の崩壊という歴史を通った現在からみれば、米国と対立してソ・中と友好関係を結ぶ政権を樹立したであろう社会党が政権を取れなくてよかったという感慨があるのも頷ける。
 だが、今日も米国はイスラム国を作ってしまい、イスラム圏全体を敵に回し、イスラム教の暴走と武装闘争の激化という現実を生み出している。こうした米国と本当の同盟関係になるということは、米国が行ってきた歴史的後退・反動の世界史的役割を担うという不名誉な路線を選択するという宣言であり、米国とともに日本もテロのターゲットになるという宣言であります。オリンピックは厳戒体制の中で行われ、イスラムのテロの犠牲になる人々が100人規模で生まれることになるでしょう。
 日米軍事同盟を結んで、兵站を担うと宣言している国が、攻撃目標にならないなどということは絶対にありえないのです。そんなことは軍事の常識中の常識です。

4.蒙昧な野田政権による尖閣国有化が、スプラトリー諸島の中国軍基地建設               
  強行を生んだ。

 結果からみると、石原都知事の尖閣諸島の都有化の動きを阻止しようというしょうもない動機から国有化をしてしまった蒙昧な野田首相の決断が、今日のスプラトリー諸島の埋め立て工事を中国に決断させたと言えます。
 尖閣諸島(釣魚台)はもともと航海標識たる岩礁に過ぎず、日中ともに領有意識はありませんでした。だからこそ、日本が台湾を併合してしまった後に、尖閣諸島の領有
を国際社会に問うたのです。日本に併合されてしまった台湾や征服王朝である清朝の末期で植民地主義の餌食だった中国などが領有権を主張することなどできない状況で、日本の領有を確認するという卑怯な手で領有を強行したことが、今日の「紛争」の根拠です。しかしながら、日本は、尖閣諸島を実効支配してしまっており、これを国有化したことが、中国をしてスプラトリー諸島(南沙諸島)を実効支配してしまおうという欲望の歯止めを外してしまったのです。
 日米が、南沙諸島の一部の島を埋め立てて滑走路を造ることに異を唱えたならば、釣魚台の国有化という日本の暴挙を指摘すればいいのです。実際、日中国交回復交渉の中では「後世の人々の知恵に委ねましょう」とペンディングを確認しているのです。釣魚台の日本国有化というのは、このペンディング確認に明白に反している行為なのです。
 野田氏の浅知恵が、呆れるほどの蓄財で精神を解体されてしまった特殊な一握りの人間が国を支配する中国を、現在の危険な大国へとますます追いやったのでした。
 民主党が消滅的大打撃を受け、現在の危険な安倍政権を誕生させた原因でもあります。
 蒙昧な野田氏の罪は大きいものでした。

 皮肉なことに、スプラトリー諸島の埋め立て・滑走路建設は、日本の石油輸送のsea Lane(シ―・レーン)上に、中国の不沈空母を作る行為であり、日本としては軍事衝突をしても阻止したい行為なのです。
 しかし、工事はほぼ完成し、中国の不沈空母は出来あがってしまっているのです。
 米日合同軍で中国軍と交戦することはあり得ません。米軍が死者を出すことをよしとしないからです。他方、中国軍は戦死者をいくら出そうとも死守するでしょう。
 実際にこの不沈空母を撤去し原状回復をすることができるとすれば、外交交渉以外にはありえないのです。
 安倍氏の軍事力だより路線は、ここでも既に破産しているのです。


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