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第47回 衆議院議員選挙結果分析

渋谷 一三
395号(2015年1月)所収


<選挙制度の改革が必要>

1. 投票したい政党の候補者が小選挙区では立候補していない。

 支持政党のある有権者が、自己の支持する党の候補者がいない選挙区で、比例区だけ投票に行くというのが、なかなか出来にくい。小選挙区を白票にしても何の意味も持たない選挙制度だからであるが、それ以上に大きいのは小選挙区のみを棄権しようとすると、選管に干渉されることである。かくして、支持政党を持つ有権者の投票率は下がる。
 次に、支持政党を持たない普通の市民は自共か公共の選択肢しかない圧倒的多くの選挙区では、争点がはっきり認識できないと投票に行かない。もともと支持出来ないから「無党派」になっているのだから。
 かくして、姑息な政治屋は争点を隠しぼやかすことによって、議席数を増やすことができる。
 いずれにせよ小選挙区制度の弊害であり、これが、絶対支持率20%の政党が3分の2以上の議席を持ち、「暴走」することができるようになる根拠である。
 投票に行かなかった有権者の中の政党支持分布は、投票に行った有権者の間の分布と全く異なるのである。これは、中選挙区制度のころとは大きく異なる点である。
 自民党支持者は5人に1人とみるのが妥当な所以である。

2. 白票分だけ議席を減らすオランダ方式を採用させよう。

 選挙制度を変えることが迫られている。早急に制度を変革しなければ、ドイツ・ワイマール共和国時代のようにファシズムの台頭を許すことになる。これは、2大政党制しか作れなかった英国や米国で、第3党派として時折登場できるのが唯一ファシズム政党でしかないという今の現実にも違った形で表れている現象である。これには根拠と必然性がある。
 選挙制度を変える内の一つ。すぐにでも実現できることの1つを提案する。
 それは、白票を投じると白票の比率分議席を減らすオランダ方式を採用することである。例えば比例区で白票が20%あり、定数が100だったとすると、議席は20減り、80議席に減る。
 これは、遅々として進まないばかりか、1票の格差是正の為に不断に拡大傾向を持つ議員定数を減らす有効な手段になり、議員定数削減の呼び水になりうる制度である。
 だが、この制度も小選挙区制では有効に作用しない。白票が最大多数にならない限り、1議席しかない小選挙区の議席数を減らせないので、現行制度同様、単なる死に票になるだけだから。また、現行の狭いブロックでの比例区でも効果は薄く、1〜2議席を削減できる程度にしかならないだろう。
 この点からも、現行の選挙制度が劣悪なものであることが露呈している。
 だが、とりあえず、白票の意思表示という表現手段を与える「白票分議員定数を減らす」制度の導入を求めよう。白票は全国総数を求め、その数に比例して国会議員の比例区定数を削減するしかない。こうすると比例区は全国区にする以外にはなくなる。この点でも死に票を減らす効果が副次的に生まれる。現行のブロック比例区制度は死に票を生む悪い制度であり、一票の格差を生む小選挙区制度とあいまって投票に行く気持ちを削ぎ、議会制民主主義を否定する政治風土を生む。
 ファシズム政党が生まれてくる所以である。

<戦後最低の投票率の意味すること>

 投票率は52.66%で、普通選挙が始まって以来の低投票率を連続更新した。
 「アベノミクスの評価だと称して、集団的自衛権の拡大解釈・立憲主義の否定の争点を隠し、議席維持を狙っている。」
 と、有る程度報道されていたにもかかわらず、きっちりと手の内に納められて、低投票率で自公圧勝というシナリオ通りの結果となったのは何故なのだろう。

 その第1は、劣悪な選挙制度による投票意欲の衰退であることは言うまでもない。
 ファシズム政党の大阪維新の会のお膝元大阪では、白票や無効票が異常に多く、3区や5区では15%にも達していた。仕方なく公明や共産に投票した有権者を含めれば半数近くの投票者が意に沿わぬ投票を余儀なくされたと推測される。棄権した人々を含めれば70〜80%の有権者が投票したい政党を持たなかったことが分かる。
 これは、絶対支持率が20%前後と推測される先の数字と符合する。
 
 投票率の低さをもって安倍政権は信任されていないと主張するつもりはない。負け犬の遠吠えとしてしか扱われない。安倍晋三なる人物がそんな謙虚な人物であるはずがない。謙虚な人物ならば、そもそも解散などしない。事実、開票日の夜11時ごろには、今回の選挙は政権選択の選挙であり、原発再開も集団安保推進の閣議決定も信任されたと考えているとうそぶき始めたのである。アベノミクス解散だなどと争点隠しをした上で選挙結果が出た途端、集団安保や米国依存体制への移行も信任されたと、予定通り言い出したのである。
 全く民を愚弄した政治屋だ。だが、愚弄されている民も民だ。愚かな民への苛立ちが議会制民主主義の否定とファシズムの苛立ちの噴出となって現れ出始めている。これが、今日の政治状況の一番の特徴である。

 その第2は、野党がないこと。
 野党の政治的位置自身がないのではなく、野党の政治的位置を比較的正確に表現しえている政党がないのである。
 このことは、基地問題を通じて米国依存体制への移行の最先端の矛盾を中国との緊張の激化を肌身で感じられる沖縄全選挙区で自公が大敗したことに表れている。
 折しもインドがクリミア帰属問題でのロシア制裁に加担せず全方位外交を展開している時に、安倍政権と自公はロシアとの友好関係の構築・ロシアへの投資等を通じて中国の大国主義・覇権主義と戦っていくという選択肢を国民に黙って捨て、千島列島の返還の千載一遇のチャンスを捨て、米国に依存せずには防衛すらできない国家への道を歩み出そうとしている。
 日本共産党が労働者階級の利害を代表できない政党であることは再三指摘してきた。労働者階級の議会政党がないのである。ここで言う労働者階級とは、未来を代表し、労働者階級そのものを止揚する階級としての、マルクスが現実の労働者階級の内に見た未来のことである。
 とにもかくにも、「健全野党」がない。
 民主党の前原や細野などは安倍派に入ればいいような政治的立場である。落選した海江田氏は原発推進を福島事故直後に雑誌に寄稿している。こんな政党が支持を回復するはずがない。
 維新の党などは、ファシズム政党の維新の会と新自由主義の旧みんなの党との野合政党で、早晩分裂するのが目に見えている。意識のある「国民」には、この程度のことは直感で分かっている。
 これが、低投票率の第2の理由である。

 第3がマスコミのミスリード。
 アベノミクスなる実体のない言葉をはやらせたのもマスコミ。今回の選挙には争点がないと騒ぎ立てたのも一社を除くマスコミ。右翼が「左翼」だと目の敵にしている朝日は、大義なき解散と、争点がないキャンペーンの片棒を担ぐ論陣を張った。おまけに自民党の回文書に怖気づいて「朝までテレビ」の出演者をドタキャンしていたことを付け加えておこう。
 自民党によるマスコミ支配は深刻な事態にまでなっている。ここに特定秘密保護法が発効したのだから、議会制民主主義は瀕死の状態に陥り始めている!
 朝日新聞の選挙直後の2択世論調査では、「安倍政権の政策が評価されたから」は11%で、「野党に魅力がなかったから」が72%だったそうだが、このように報道することで報道機関の役割を果たせず政府のプロパガンダ機関になり下がっている自己への分析を放棄して誤魔化している。

<ファシズム政党=維新の党の衰退>

 投票日の午後9時には早々と敗北宣言をしていた大阪維新の会部分は、大阪の比例区での得票率が比較第1党だったことが翌日に報道された途端に、またふんぞり返り始めた。
 あくまで低投票率、白票・無効票の山のなかでの比較第1党に過ぎないのであり、明らかに衰退しているのであるが、衰退してはいなかったと思い込み始めているようだ。
 都構想では、道州制とあいまって、道議会・都議会・区議会と、現行より2種の議会が増え、無駄の削減どころか、新たな無駄な機構の創出にしかならないことは再三指摘してきた通りである。この「無駄の創出」はだんだん認識されてきたようだ。
 それにも増して有権者が維新の会から離れ始めたのは、そのうるささにある。少しは静かに粛々と政治を遂行したらどうなのだという思いである。向こう受けを狙ったパフォーマンスの記者会見をほぼ毎日のように見せられてきて食傷気味なのである。「我こそは正しい。あいつらは悪者だ。」の自己中心の言い訳の連続にうんざりしているのである。
 また、橋下氏が在特会幹部とテレビ中継させながら「中学生のガキのけんか」をしたことも、ファシストの体質を端的にあらわにしてしまい、支持離れを促進したことは間違いない。
 はっきりと、ファシズムの危険と認識し始めているというよりは、直感的にうんざりし始めたというところであり、これが維新の会の壊滅的敗北にならなかった理由である。したがって、ファシズムとの闘争はどんどんやって行かなければいけない。

 みんなの党の崩壊は、新自由主義が文字通り自由主義で、自己組織力が欠如していることが露呈したと言える。
 新自由主義の物的根拠は、肥大化した行政機構や「統治機構」(=議会)の存在そのものにある。新自由主義はこの削ぎ落しを主張している以外の本質はない。したがって、その主張の行きつく先は、削ぎ落しを断行する権力を掌握することそのこと自体にしかない。  そこで手っ取り早く権力を掌握したいという衝動が一義的なものとなり、権力の掌握の仕方を巡り、安倍派とくっつくことを主張する渡辺氏、維新の会とくっつくことを主張する江田氏、民主党を中心とする野党再編を主張する浅尾氏と分裂しただけのことである。

 ファシズム政党である橋下代表派と新自由主義の江田派は早晩分裂する以外にない。
 江田派は権力奪取の道筋を維新の会の「勢い」に幻視しただけのことである。

<嘉田氏を利用した生活の党の没落>

 生活の党は4議席になり、政党要件を満たさなくなった。
 これは、未来の党の代表の座を退くよう嘉田さんに迫った時点で筆者が宣告した通りの結果である。小沢氏は小ブルジョアジーの政治利害を的確に表現する能力を持っていたが、嘉田さんを利用して捨てたことで自らの政治生命を終えたのだった。
 今回の選挙は、この反映に過ぎない。
 東氏や森氏など、政治的議論のできる人材が消えて行くことになったのは、まことに惜しいが、小沢氏の利用主義の因果応報である。


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