共産主義者同盟(火花)

社会主義運動の現状と課題2 −農業−

渋谷 一三
383号(2013年11月)所収


<はじめに>

 自民党が40年続いた減反政策をやめようとしている。
 これは画期的なことだ。
 自民党が初めて農民を切り捨て本格的にブルジョア政党になろうとしている。このことに自民党は無自覚ではあるが、民主党政権という砂上の楼閣が波に流され消滅する過程で、唯一の遺産として、自民党が農民を切り捨てても政権を維持出来る情況が形成されたのである。
 減反政策を止めることは農業の本格的ブルジョア化を開始することであり、戦後の農地改革による小ブルジョア農産方式が崩れることを意味する。明治時代の小作制度、戦後の自営農制度につぐ画期であり、大ブルジョア式農業制度の創始と捉えてよい。
 
 本稿では、減反政策の廃止がなぜ大ブルジョア式農産方式と呼べるのか、どのような農産方式が出現していくのか、を分析するとともに、こうした農産方式がどのように社会主義的農産方式を準備するのかを考察する。
 農業問題の大ブルジョア的解決が決して解決にならない諸問題に直面できるまでに歴史が発展して行きついた時に要求される農産方式を、その過程の中で準備していく能動的な歴史形成運動の中にしか社会主義は準備されないのである。
 したがって、農業問題への大ブルジョア的解決への批判の深化こそが現在の社会主義運動の具体的内容である。

1. 減反政策の廃止が生み出す近未来の現実

 現行減反補助金、10a当たり15000円を来年度から削減して2019年度には0にしようという案が実現されそうである。どの案でもよいが、要するにTPPに参加したことにより、減反補助金を全廃するということが必然になったということである。
 自民党の主観からすれば、減反補助金の廃止を各国(特に米国)から求められ、全廃の時期を出来るだけ伸ばす条件闘争をするしかない局面に入ったということであるが、補助金を廃止することによって、作付けする意思も能力もなくなった高齢農家の農地売却が進むことになる。
 現実に作付けする体力を失った高齢農家が農地を売却しないのは、農地の固定資産税が格安な上に、農地を所有しているだけで減反政策に協力しているとして減反補助金が入ってくるからである。1haあれば15万円が毎年入ってくるのであり、いわば第2の年金になっている。自家消費用の野菜の栽培と合わせて何とか「子どもの世話にならずに」生きて行ける大事な収入源だった。
 他方、その農家の「こども」達は、農業だけでは食べていけない現実に迫られて、両親を農村に置いて、都市に出て就労している。
 こうした構造を可能にしてきたのが減反補助金であり、補助金が廃止されれば、農地を相続していずれ農業で生きていくか、農地を売却して都市部で生きていくかの選択を迫られる。したがって、大部分の農地が売却され、農地の大規模化が進み、結果として生産コストが下がり国際競争力を獲得出来る、というのが政府・自民党の目論見である。

 だが、事態はこうした目論見をはるかに超える規模と質的転化を生み出すだろう。
 米国式の大規模機械化農業が始まるわけではないのである。大規模化された農地を所有する米国方式は実現されない。大規模化して収益を増やした農家がまた隣接地を買収するなどというゆっくりとした歴史過程など取れないのである。農地の売却は5年以内に一気に進むのである。一気に売り手が集中することから買いたたきができるが、そんな小規模なことでは済まない。一気に買い取るためには資金がないから、結局株式会社方式の農業生産が主流になる。これが、単なる大規模粗放機械化農業をしている米国方式と全く異なる質的転化を生み出す根拠になる。
 拙稿『社会主義運動の現状 第2節資本主義的農業の発生(2013年1月)』で考察した会社形態での農業生産が大規模に始まることになる。
 これは画期的な歴史的転換である。
 米国式大規模農業は、個人で大規模生産をすることで人件費の割合を極力下げ低コストを実現してきたのであり、基本的に個人生産である。個人が大規模生産するために機械化と化学肥料の大量投与が必然であり、商品作物の種類の単純化と食糧の農薬汚染が必然だった。解決できない問題として、食材の貧困化と農薬汚染があった。
 ところが、会社方式での農業生産は必ずしも少品種大規模生産をする必要はなく、多品種少量生産もしようと思えば可能である。したがって、農地維持のための大量の化学肥料投入から解放される可能性も秘め、病害虫駆除のための大量の農薬散布を必要としない条件をも手にいれている。

 だが、大規模化としてしか認識できない自民党政権では、農業生産の上記のような質的転化の可能性を開花させることはできない。社会主義的農業運動は、おそらく、会社方式で資金を調達した農業生産組織を協同組合化することと、たくさんの独立した農業協同組合による小規模生産による化学肥料からの脱却と植物相の脱貧困化による農薬大量散布からの脱却の実現であろう。
 協同組合間の関係などの発展はその後の課題として、他産業の協同組合や流通協同組合や消費協同組合などの総合的関係性の下で解決形態を見出していくはずである。




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