[HOME | バックナンバー | 綱領 | 戦術・組織総括 | サイト内検索 | パンフレット ]

中国との領土紛争が明るみに出したこと

渋谷 一三
372号(2012年10月)所収


1.日本の武装をどうするのか。

 世界第2位の軍事力を背景に、中国は膨張主義を続けている。尖閣列島(釣魚台)には海監12隻を出し、1000隻の漁船を「尖閣海域」で操業させようとした。これは直前に米国の圧力で阻止された。
 訪中の途中に日本に立ち寄ったパネッタ米国防長官は「日米安保条約に基づく防衛義務が米国にある」と確認するとともに、「日中の対立の平和的解決を要望した」。『中国が実力行使をするのならば米軍の軍事力を行使すると中国を脅しますよ』と宣言したということである。
 この引き換えに、日本はオスプレイの配備を受け入れた。
 9月17日、パネッタ国防長官と森本防衛大臣は共同会見をし、パネッタ長官は上記の声明を発し、森本大臣はオスプレイの安全な飛行に関する協議進展を確認した。その2日後に岩国での訓練飛行が始まった。
 中国は漁船を「日本の領海」に入れることを中止したが、国内向けには、既定方針通り「日本の領海」で操業したことにして報道した。このちぐはぐさが何よりも雄弁に米国の軍事圧力に中国が屈したことを物語っている。
 中国は南沙諸島ではこの方式を実践し、南沙諸島から最も遠い国であるにも関わらず軍艦を派遣して実効支配を獲得し始めている。最も近いフィリピンの軍事力では中国には対抗できない。米国に勝利したばかりで疲弊していたベトナムには国境を越えて戦争を仕掛けた経歴をもっている。
 中国の支配層は特殊な階層を形成しており、この階層はソ連における支配層や朝鮮における支配層と同様の特殊な階層になっている。この階層がたとえば日本における武士のようなものであれば階級と呼んでよいが、これを階級と呼ぶのかどうか、新左翼には理論上の問題として提起されている。
 とにもかくにも中国の支配層は天安門事件で自国民衆を虐殺した経歴も持っており、ベトナムへの侵略戦争をした経歴を持ち、朝鮮の独裁王国を支援している唯一の国になっており、チベット民衆を抑圧している。この中国が領土的野心に基づき大国として横暴な振る舞いをし、尖閣列島の領有を主張しているのである。この中国共産党をどう評価するのか。これもまた理論上の課題として提起されている。
 次に日本の武装の問題。新左翼はブルジョア政権の軍事力増強は革命への阻害物を強大化させるという観点から反対してきた。他方、共産主義政権が出来たならば白軍から革命を防衛するために赤軍を強化して組織するという2段階戦略をおおむね採ってきた。中国人民解放軍は赤軍として組織され強化されてきた。いわば、新左翼の理論上の産物なのであり、これが人民への敵対物になっていると現状を認識するのならば、新左翼の2段階戦略を、間違ったご都合主義の態度と断ずるべきである。さらに、政権をうんぬんするどころではない現在の状況で、中国の強大な軍事力に対抗するための日本の武装にどのような態度を取るのかの態度決定を迫られている。これは、新左翼だけの問題ではなく、日本人民全体に提起されている問題ではある。
 このことは必然的に日本の核武装の問題への態度決定をせまっているし、核武装をするのならば原発のサイクル確立の問題を提起している。
 野田首相が急に原発0をあいまいにし出したのは、パネッタ米国防長官に核弾頭をどうやって生産し続けるのかを問われ、「想定外」の事態に慌てたからに他ならない。この人の無知にはあきれ果てる。
 が、日本の核武装をどうするのかが日本人民に問われていることは、野田首相の無知とは無関係に、確かなことである。

2.島嶼の領有問題

 独島(竹島)や尖閣列島(釣魚台)の領有権問題の発生は、これらの島嶼が無人島であり、島というより岩というふうにしか認識されず、海上交通上の標識にすぎなかったことに本源的な原因がある。要するに、どのような経済的価値もなかったので、誰も領有権を主張しなかったのである。
 ところが、排他的経済水域が設けられるようになり、海洋地下資源の採掘が可能になり、経済的価値が飛躍的に大きくなったことにより、領有への動機が生まれた。
 したがって、本来は国際共同所有(公海と同じ扱い)にするか、近隣諸国間の共同所有が正しい解決法であろう。だが、このようにした先例はない。このため、共同所有を提起した側が弱腰とされてしまい自国民から非難される構造になっている。ゆえに、実効支配が決め手となって来ており、軍事衝突の危険性が高まっているのが現状である。

3. 揺れるブルジョア階級の方針

 ブルジョアジーの利害を優先するならば、尖閣列島は中日共同領有とすべきである。中国が釣魚台の領有権を強行に主張し始めたのは、稚拙な民主党政権のせいではなく、食生活の向上を追求しだした中国が豊富な漁業資源を必要としだしたからであり、尖閣列島の地下資源が有望なものであることが判明したからである。これは、南沙諸島も同じである。
 今まで中国が比較的おとなしかったのは軍事力において日本の方が優位に立っていたからにすぎず、この10年ではっきりと逆転した軍事力の差を背景に中国が領有権を主張しだしたのである。だから、どのように「きちんと説明」しようが、「タイミングよく」国有化しようが、「船だまりを造ろう」が造るまいが、中国はより強硬に釣魚台の領有権を主張する。この傾向は時間をおけばおくほど強まることは間違いない。北朝鮮が韓国を砲撃しても米軍が反撃しなかったように、中国が尖閣列島で日本軍と交戦しても米軍は反撃をしないであろう。これは今はまだ60%ぐらいの確率の賭けだが、中国が海上保安庁の船であれ自衛隊の艦船であれ、これを相手に局地戦を行う能力と覚悟があるのは間違いのないことだ。
 だが、自民党も含め一部の政治家以外は、上記のような軍事的リアリティを持っていない。寝ぼけた批判をして、民主党政権でなければ良かっただの、米軍が沖縄から撤退すればよいだのと言って事足れりとしている政党すらあるありさまである。自民党政権になって首相が靖国参拝でもしようものなら日系企業はまた焼き討ちにあうことは間違いない。
 中国の安い労働力を搾取し、大きくなった中国市場に販路を求めるならば、靖国参拝などというどうでもよいイデオロギー操作事案に固執する自民党政権は敵対物でしかない。釣魚台を共同所有にして、もうひとつの紛争地域である大陸棚海底油田の共同開発(中国が"実効支配"している)とセットにするという落とし所にすべきである。
 こう決断をしないのならば、中国市場への投資と販売をあきらめ、インド・インドネシア・マレーシア・ベトナム・ビルマ等への投資を促進し、ここへシフトすべきである。そして中国民主化勢力への援助とチベット独立運動への援助を開始し、中国共産党政権を転覆する活動をし、共産党政権の消滅後の中国市場を獲得するという戦略を描くべきである。
 日本のブルジョアジーはこのどちらも決断することができない。
 もしかすると、階級としての一体性を失いつつあるのかもしれない。
 すでにグローバル企業化した企業にとっては、尖閣列島の領有問題はなんら直接的利害のない事案である。他方、多国籍化のあしがかりとして中国に進出したばかりの企業にとっては、釣魚台の領有にこだわることは致命的欠陥であり、「釣魚台是領有中国的」と自ら書いてもいいぐらいの死活的欠陥である。後者のユニクロはすでにバッシングされ始めたが、工場が焼き討ちにあった自動車業界にとっても、本来関心の外であった領有権問題が、中国市場と関わり続けるのか撤退するのかの決断を迫られる深刻な問題として浮上してしまっている。
 政治家を名乗る人は中国への態度決定をしなければならない。そういう事態だということを認識できない人間に政治を語る資格はない。


[ このページの先頭へ]