共産主義者同盟(火花)

反「アラブの春」運動の高揚万歳!

渋谷 一三
371号(2012年9月)所収


 9月12日、リビアの米国大使館が襲撃され、米国大使ら4人が死亡した。大変に良いことである。米国はカダフィ氏を「逮捕する」ことすらせずに虐殺した。リビアの大衆もようやく「アラブの春」が米国による「危険で理解不能なイスラム教徒の国々」を転覆する策動であったことに気付き始めた。インタビューに応じた中年の女性は「米国大使館なんて要らない。」と、大使館がスパイ活動・リビア転覆活動の拠点であったことに気づいた本質的な指摘をしていた。
 すでに消滅した日本のマスメディアのジャーナリズムはシリアの報道すら出来ず、米国のメディアの映像を垂れ流しているだけ。このような状況の中で、自前の報道を志した女性ジャーナリストが殺害されるという痛ましい事件が起こった。彼女は決して前線を取材しようとしたのではなく、「銃後の大衆の苦しみ」を取材していたのだが、この報道は両刃の刃で、シリア政府を貶める立場の米国およびその傀儡の「自由シリア軍」にとっても真実を暴露されかねない危険な存在だった。自由シリア軍の支配地域で、自由シリア軍の側から取材に入ったにもかかわらず、エイジェントに指差され、襲撃された。明らかに彼女の行動を知っている自由シリア軍のエイジェントの指図である。
 シリアの反米の戦いは苦戦を強いられながらも持ちこたえている。米国はイラクやレバノンの「商社」を通して1発1ドルの銃弾を供給している。これらの「商社」と称する建物は小さな商店の規模で、一カ月に1000万ドルにもおよぶ「支援」を自発的にしているというのだ。この「商社」たちが米国の「自由シリア軍」への資金および武器供与組織であることは間違いない。常識というものだ。
 かくも情報操作され一方的な情報に晒されることに疑いすら持てなくなっている日本人の多くは、彼女の死をシリア政府への憎しみの材料と受け取ってしまっている。そうじゃないんですという彼女の叫びはいつ届くのだろうか。




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