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消費税増税に反対する(1)

渋谷 一三
368号(2012年5月)所収


<はじめに>

 民主党政権は同じ政党の政権ではない。民主党自体を解散し、衆議院を解散すべきである。
 消費増税をしないという公約の下で政権を奪取したのに、菅内閣で消費増税を言い出し、参議院での過半数割れを生んだ。参議院での大敗北で民意ははっきり示されたのに、後任の野田内閣でも消費増税を進めている。菅内閣との連続性があるのかというと全くそうではない。菅がヒステリックなまでに脱原発にぶれたのに対し、原発の輸出推進を進めている。全く反対の原発政策である。
 民主党政権は小沢政権になる以外はマニュフェスト違反の詐欺政権であり、直ちに衆議院を解散すべきである。

1. 銀行・財務省の傀儡の野田政権

何も自前では考えることのできない野田さん。消費税を上げることが、不人気でも国家百年の計にかなう大義だと思い込まされるに至り、完全なマインド・コントロール下に置かれてしまった。個人でもかなわん事態なのに、一国の総理がマインド・コントロールされてしまうと、とてつもなく迷惑なことになる。
現在、日本の銀行は多額の国債を保有している。メガ・バンクは40兆円程度の国債を保有している。この金利が1%前後。このメガ・バンクの場合、年間4000億円が国債の金利収入として入ってくる。銀行の固定費用を補って余りある。
ところが、訳も分からず野田さんがのたまわった通りにインフレ目標を設定し、その通りに年1%程度のインフレを達成できてしまったとすると、この国債の利子収入が無に帰すことになる。銀行の固定費を払えないことになり、銀行はより高利の貸し出しをしなければならなくなる。国債を保持しておくメリットは無くなり、貸し出しをする必要が出てくるのだから、各行は国債を売ろうとする。当然、国債は暴落する。銀行は倒産の危機に直面する。仮に国債を売り放ち倒産を免れ得たとして、高利で資金を借りる企業など日本には残っていない。優良企業は、トヨタのように自分が金貸しをするほどに潤沢な資金をもっており、そうでなくても株式市場で資金を調達できる。海外進出した企業は現地の金融機関から借入したほうが有利だ。結局のところ、銀行から金を借りようとする企業は明日をも知れぬ非優良企業のみであり、銀行が高利で金を貸し出すという方策は成立しない。要するに、銀行には収入源がなくなる。
というわけで、インフレ・ターゲットなどという政策は人為的に実現不能な政策と言う前に、実現する気もない政策なのである。
さて、消費税値上げはなぜ出てくるのか。
銀行の収入の大半が国債の利子に依っている以上、国債発行が0になってしまっては困るのである。換言すれば、国家財政が健全化して国債の新規発行がゼロになってしまったら、その途端に銀行が倒産の危機に見舞われるのである。要するに金融不安が起きる。金融不安を無くすためには、財政赤字を続け、国債を発行し続けてもらう以外にはない。
かくして、大ブルジョアジーの利害に忠実ならんと欲すれば、以前のように浪費型国家予算を組み、公務員改革などせずに消費者としての公務員の数を多く維持し国家予算に負担をかけるのが唯一とりうる政策ということになる。何度も言うが、国内に有望な融資先などないのである。なのに、日本が米・欧のようにバブルを不断に生み出して金融操作をし金融危機に陥ることにならずに済んでいるのは、偶然にも国債依存で銀行が食べていける構造が出来上がっていたからにすぎない。
日本はこの間、中国等の新興国の安い商品を輸入したり、それと対抗したりすることによって物価上昇を抑え、むしろデフレ経済になっていたために1%という低金利で国債を発行することができた。米欧は2%程度のインフレであったために利回りは3%前後になってきた。米欧の金融資本からすると3%以上の金利で貸し出す貸出先を見つけなければならず、実際は見つからないので、作り出すことにしてきた。これが、そうと分かっていながら不断にバブルを作ってきたゆえんである。結局のところバブル崩壊にともなって公的資金を入れ始末することになる。不良債権というババを最後は国が引き税で穴埋めしてもらう構造のポーカー・ゲームが米欧型である。あらかじめ国家予算に巣くうのが日本型である。あるいは「古きよきケインズ型」と言っても良い。五十歩百歩である。
かくして、国債を減らすつもりのない大資本が取る政策は、公務員削減ではなく現状維持、事業仕分けではなく公共事業の全面復活、年金や介護費用の増大分は増税で賄う政策である。
野田一派は自民党と合流して大ブルジョア政党へ自らを再編すべきである。あるいは先に見たように、労働組合の利害も国債発行・水ぶくれ公務員維持にあるのであるから、米国のように、民主党が大ブルジョアの政策を採るのかもしれない。
いずれにせよ、どちらかが大ブルジョア政党であり、どちらかが小ブルジョア政党である。ここへ、キチンと再編することでねじれもなくなろう。とにもかくにも、労働者階級の政党は不在である。

2. 小ブルジョアの政策はどのようなものであるべきなのか。

小ブルジョアを具体的な小企業や農民で考えると分かりやすい。税は少なければ少ないほど良い。規制は少なければ少ないほど、訳も分からない手続きに人件費を食われることもない。やりたいように出来やすい。だから、公務員は削減できるし、削減すれば税も安くなり、一石二鳥と感じられる。要するに「小さい政府」支持である。
 新幹線網や高速道路網の新設は要らない。原発を廃止して小規模発電に参入したいし、小川で発電して売電できればありがたい。こういう領域では効率を重視すると大資本に負ける。TPPには加入しない。自動車の輸出など減ってもよい。どうせ現地生産が主流なのだから、日本で生産したものを輸出する必要などない。実際韓国ほど労賃は安くはないのだから、TPPによって韓国が受けたような「恩恵」は受けられるはずもない。それよりは、自国の農業を守り、高くても需要のある小規模高度隙間産業を守るほうがよい。陳情にいくとき以外には乗ることもない新幹線などは必要ない。物流を安く高速化できる範疇でのみ高速道路は必要。
 こうみて来ると、小沢さんが主張してきた路線が、小ブルジョアジーの政策であり、先の総選挙では小ブルジョア路線が勝利したはずだった。この勝利を変質させるために小沢裁判をでっちあげ、見事に小ブル路線を粉砕しつくしたのが野田政権の誕生であった。

3. 労働者階級にとっては、消費増税は粉砕すべき政策であり、TPPはもちろん加盟すべきではない政策である。

先にTPPから見よう。「小さな政府」と「新自由主義」とは同じ政治勢力が主張してきたために混同しやすいが、「小さな政府」は小ブルジョアジーの要求であり、「新自由主義」は大ブルジョアジーの国際政策、もっと言えば米国大資本の国際政策であり、両者は全く違う性質のものである。
 人格的に言えば、英国ではサッチャー、米国ではレーガンが、「小さな政府」と「新自由主義」の主張者だった。このときの英国は、英国病に悩まされていた。労働党政権のもとでますます肥大化した能率の悪い政府組織=ろくに働かない公務員を肥大化して雇用していて、これを養うために高い人件費と高額な税と弱い為替レートに苛まされ国際競争力を失っていた企業。これが英国の姿だった。小さな政府による安い税と安い賃金で働く労働者の創出が求められていた。「小さな政府」は安い法人税を可能にし、「新自由主義」による国境を廃絶した賃金が後者の安い賃金で働く労働者の創出に貢献した。
 米国も米国病とこそ言われなかったものの同様であった。日本の猛追にあい、遂には国際市場を日本に奪われ、米国国内市場にまで日本に参入され、「Japan as No1」と言わざるを得なかった状態が、レーガンの共和党政権が誕生した時の状態だった。米国小ブルジョアは国内市場の維持に躍起となり日本製品の不買運動や破壊運動を起こし、米国司法を頼って訴訟の乱発を始めた。この国内市場を守ろうとする小ブルジョアの運動が、基軸通貨国米国の場合「新自由主義」という国際的形態を要求する。要するに大ブルジョアジーの利害と一致するのである。
 さて、現在の日本にあって、消費税増税は大ブルジョアジーの政策であり、貧困層をなす労働者階級には大打撃に相違ない。社会保障がきちんとなされるなら仕方がないなどとコメントしているのは大ブルジョアジーに買収されている正社員層であり、自分の労賃分の価値すら生み出していない「働かない労働者」達である。いまや年収300万以下から年収200万以下になった労働者下層部が比率的にも労働者の主流になっている。この階級に消費税は一律に5%アップしてかかるわけであり、年収1000万の労働者上層部の10%消費税の負担と年収200万の普通の労働者の10%の消費税の負担とは、後者が圧倒的に負担である。こんなことは経済学のイロハである。
 一方、従来売り上げ高が年間3000万以下であるために消費税分の納入しなくてよく、「益税」となっていた小ブルジョアが10%になったら現行制度のままだったとしても5〜7%は納税しなければならなくなり、おそらく、「益税」制度がなくなり納税の事務だけが過重労働となることになる。小ブルジョアにとっても消費増税は敵である。増税による消費の落ち込みは、衣料品や医療、美容など小ブルジョアが経営する業態を直撃する。この点で、小ブルジョアジーはより深刻に消費増税を粉砕することを迫られている。
 消費増税に関して、労働者階級と小ブルジョアジーの利害は一致する。粉砕あるのみ。したがって、野田内閣打倒であり、衆議院解散である。
 大ブルジョアジーの政策である「新自由主義」に関して言えば、労働者階級は世界的階級に成長する必然的な過程としてとりわけ先進国の労働者にはつらい過程として甘受するしかないことである。労賃の世界的平準化は避けて通れない。資本の必然的運動の必然的結果である。
だが、小ブルジョアジーにとっては「新自由主義」は断固として粉砕すべきイデオロギーである。
米作は大規模農場制で生産できないことはない。株式会社形式にすれば農民は農業労働者化することが出来、休日が取れるようになり旅行もできるようになる。畜産農家にとっては国際競争で利ざやが薄くなった現在、旅行が出来るようになるのは魅力になってきている。従来は旅行に行けなくてもあまりある収入の魅力があったが、今はそれもないからである。
バラ色のように見える農業の株式会社化であるが、実は大規模化することによって製品である農産物の質は確実に落ちる。農薬の人体への被害・農地への打撃もより深刻化する。大規模化を避けて農業法人化する協同重視の方針であっても、実のところコルホーズや人民公社の実験の結果が支配する。倒産したりすることが出来ない競争。農業法人が倒産したとして、その耕地は耕作放棄するのかといえばそうではなく、結局「新しい」会社が、引き続き同じ農業労働者を雇用し同じ耕地で生産するしかない。会社の倒産になぞらえるにも限界があり、倒産を通じて新製品を生み出したり効率化を実現したりする株式会社とは、結局異質なものである。
雇われた農民は真面目に働かず、出来るだけ目を盗んでサボろうとするし、しなくても分からないやったほうがいい労働などには気づく力すら失う。農民より高給の労働監視員を養うロスを抱え込むことにもなる。要するに武士と小作の歴史や人民公社の歴史なのである。
工業小ブルジョアジーにとっても事態は同じである。「新自由主義」で規制を米国式に単一化された市場では、この規制に慣れている米国企業が有利であり、小規模経営より大規模経営の方が有利である。日本の小工業者にとっては下請け構造の強化にしかならず、その構造も日本企業の下請けから世界企業の下請けへとより従属度が増す変化でしかない。
農業小ブルジョアジーにとっても、工業小ブルジョアジーにとっても、「新自由主義」の現在の形態であるTPP加入は、自らの存在を抹殺する行為に他ならない。反対する主体すら消滅するのである。
                                
―つづく―


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