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原発による被害を最小限とするために

早瀬 隆一
355号(2011年3月)所収


 東日本大震災による甚大な被害のなか、それでもなお被災地の人々は相互に助け合いなんとか前を向いて進もうとしている。全国の人々もまた自らに出来ることを探し行動しはじめている。ここにおいて暗雲のごとく怪物のごとく存在しているのが福島原発をめぐる事態である。現地において過酷な作業についている現場の労働者・消防士・自衛隊員などの献身的な努力にも関わらず、事態は予断を許さない状況にある。
 私たちは原子力発電について、それが現在の技術水準においては完全な制御が困難であり、かついったん事故が起きるやその影響が途方もなく甚大であることから、その廃止を主張してきた。しかし福島原発の暴走の収束と被害を最小限に食い止めることは、原発への立場のいかんに関わらず、全ての人々の変らぬ思いであり姿勢であるものと思う。本稿の趣旨は福島原発の事態が未曾有のそして現在進行形の危機であることをふまえ、被害を最小限に食い止めるために、政府や原発関係者に対して求めるべきいくつかの実現可能な火急の事柄について、読者諸氏に提案することである。なお本稿は3月17日時点における情報に基づくものであることをお断りしておく。

想定される事態を巡る情報開示を

 原発の暴走といった現在進行形の危機において、情報を全面的に作為なく開示し、人々が自主的に判断できる材料を提供することは不可欠なことである。そしてそれは、今現在起きていることについての情報だけではなく、今後起こりうると想定される事態についての情報を含むものでなければならない。
 現在、政府・原子力安全保安院・東京電力・学者・マスメディアの対応は、「その時点で起こっていること」についての情報にとどまっており、そこでは「現在の数値は直ちに人体に影響するものではない」と繰り返されているのみである。使用済み燃料の問題も四号炉の異変が白日のもとに晒されるまではまったく語らなかったのである。日々進行する事態において、「今起こっていること」に情報を限定する姿勢は、情報の開示としては決定的に不十分であり、実質的な情報の隠蔽と言わざるをえない。そこに原発の維持・推進という立場からの作為があるとしたら今はそのような場合ではない。
 こうした政府・東電・学者・マスメディアの姿勢は、国民の不信感をよび、むしろ過剰な不安や風評を増大させる要因ともなっている。
 むろん事態の収束こそが望まれることは言うまでもない。しかし事態は楽観を許さない状況にある。政府・東電・原子力学者は、今すぐ、今後起こりうる事態についての情報と、その影響−わけても人体への影響−がどのような範囲で起こりうると想定されるのか、を人々の判断材料として作為なく明らかにすべきである。わけても原発推進に寄り添ってきた学者諸氏は最後の誠実さをもって自らのシュミレーションを語るべきであろう。

原子力発電所のいったんの稼動停止を

 政府・学者・マスコミは東日本大震災と同規模の余震が予想されるとして、地震・津波への厳重な警戒を国民に呼びかけている。東日本大震災との関連は不明であるが新潟や静岡でも震度5〜6の地震が発生している。にも関わらず柏崎・刈羽原発や浜岡原発をはじめ各地の原発は、東日本大震災により自動停止となったものを除き稼動を継続したままである。これはおかしな話と言わねばならない。少なくとも大規模な余震の予想される期間において、各地の原発をいったん一時的に停止することが即座に必要である。
 これは現実可能な要請である。電力会社は電力不足を喧伝するかもしれないが、その七割が休止中といわれる火力発電所の稼動準備の間、計画停電と全国の人々による自主的な節電努力で乗り切ることが可能であろう。すでに行われている唐突に発表された計画停電は大きな混乱が予想されたが、人々は不満を持ちつつも整然と対応し、最小限の混乱に抑えてきたではないか。そこには被災地の人々への協力と連帯の想いが存在したからである。政府が福島原発事故の再現を回避するための措置として、更なる計画停電への協力を虚心坦懐に求めるならば、大半の人々は協力を惜しまないだろう。
 むろんこの措置は原子力発電所の存続の可否をめぐる根本的議論(それは事態の沈静化の後に国民的議論としてなされる必要がある)とは別次元の、火急の緊急措置としてのものである。

全ての皆さんへ

 福島原発をめぐる事態は非常時を示している。私たちはリアルな対応に徹せねばならない。今優先すべきことは危機を回避することであり、その被害をできるだけ最小限に抑えることである。政府・自治体に対しであれ東京電力や自衛隊に対してであれ基本的に協力し援助すべきであろう。被災地への救援をめぐっては多くの人々が既に準備や行動を開始している。原発事故への対応という極めて専門性の高い課題において何ができるのかは限定的ではあろうが、少なくともその姿勢においては、被災地支援と同様の姿勢が求められていると思うのである。被害を最小限に食い止めるために。


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