共産主義者同盟(火花)

小沢党首を守れない民主党の危機

渋谷 一三
332号(2009年4月)所収


 小沢さんの秘書がいきなり逮捕された。政治献金を不正に取得したという罪名だが、この程度のことで逮捕すること事態が異例かつ違法である。その上、罪はないときている。全くの不法逮捕だ。なのに、民主党は選挙目当てに浮き足立っている者たちが目立っている。情けない限りだ。
 西松建設から政治資金を受け取ったという。適正に処理せずに、小口に分け個人献金の装いに偽装したというのが、嫌疑の全てだ。小口に分けずに企業献金とし政党支部が受け取れば適法なので、単に事務処理の手続き上の問題にすぎない。このことは、当の小沢さん自身が述べている。だが、この談話では不十分だと、民主党の前原などの本来自民党に行くべき部分などが、騒ぎ立てている。自民党は民主党の100倍ほどの政党支部を作り「適法」に企業献金を受け取っている。要するに議員の後援会ごとに政党支部という言う名の企業献金受け取り団体を作り、環境を「整備」してある。企業献金に依存する体質が民主党より強いことの証左に過ぎない。
 小沢さんの場合、政治支部をもっており、ここで公然と「献金」を受け取っていれば何の問題もなかった。
 だが、世論なるマスコミの誘導は、ここで突如、小沢さんに対してのみ二重基準になり、「企業献金は限りなく賄賂に近く、違法だ」という恣意的法律を作る。突然、人民政権の法律になる。企業献金は賄賂に決まっている。西松建設は東北地方における公共事業利権に割り込みたかったからこそ献金をするのだ。それも下請けを使って、小口の10万円という額も下請け企業に持たせて。こうすれば、賄賂性の立証は難しいし、西松建設に累が及ぶこともない。一石二鳥という算段だ。
 西松建設が企業名を伏せるのには理由がある。自民党に知られたくないという事情だ。全く知られたくないならば、下請け企業の社長個人名での献金にすればよいのだが、それでは、小沢さんに気づいてもらえない。秘書にだけは、これらの金が西松建設からだと分からせた上で、自民党に分からないように「献金」したかったのだ。なぜか。
 東北地方で弱いものの、全国規模では自民党に「献金」し、利権を得ている。現に、和歌山の二階さんは西松建設から「政党支部」を通じて適法に「企業献金」を受け取っている。二階さんが多いだけで、二階さんだけでもなかろう。西松建設からすれば、自民党議員に送った「賄賂」で既に利権を得ているのであり、この利権を手放して東北地方の利権を得たいわけではない。東北地方の利権にも割り込みたいのであって、全国での利権を手放したくないことが第一であることは言うまでもない。
 かくして、堂々と企業献金の体裁を取れなかったのであり、その原因は、自民党にある。自民党の報復が怖かったことが、西松建設をして、姑息な献金方法をとらしめたのである。
 このことを小沢さんは言うわけには行かない。言ってしまえば西松建設だけではなく、その他の企業からの献金を失うことになる。決して献金先に迷惑を掛けないという仁義をわきまえていることが、彼が献金を集めることが「上手」であることの根拠であり、彼の政治生命の生命線である。
 民主党が先の参議院選で圧勝できたのも、こうした潤沢な資金のおかげであることを当の民主党議員が気づかなくてどうするのだ。小沢さん個人がヘリコプターまでチャーターしたからこそ、あれだけの選挙区を回れたのであり、交通不便な「見捨てられた」山村地域を遊説することができたのではなかったのか。そして、農村部、山村部での勝利があったからこそ、参議院選で勝てたのだった。こんな動きはヘリなくして到底実現しなかった動きである。

 ダブルスタンダード=二重基準が許せないのは、批判の側が「企業献金は賄賂である」という真理を真剣に振りかざして、企業献金廃止運動を起こしていないということばかりではない。自民党の選挙キャンペーンとして無茶苦茶に無理のあるキャンペーンを開始させ、それを有効なキャンペーンにしてしまったこともまた、許すことのできないことである。
 検察は三権分立の司法の分野にいながら、実は政府の機関に過ぎない。政府の指揮に従う。政府高官の汚職が摘発されないのも不思議なことではない。小泉さん一族の東京湾横断道路に絡む汚職疑惑も道路公団総裁を突如解任して口を封じて終わりに出来たのも、検察の指揮権を握っているのが政府だからだ。今回、自民党への企業献金は不問に付し、微罪にすらならない手続きミスを反民主党選挙キャンペーンに利用できたのも、指揮権を政府が握っているからだ。
 田中角栄元総理はなぜ摘発されたのだという疑問を持たれた方へ。
 彼は日中国交回復をしてしまった。米国依存の植民地の傀儡政権の長という位置に甘んじない「ならず者」になってしまったのだ。だからこそ、米国のロッキード社という政商の賄賂を突然問題にし、米国がなんぼでも証拠を握っている「合法」だった「献金」を賄賂として正しく立証したのだった。首相の権力を超える米国の権力の「犠牲者」となったのが、田中元首相である。

 民主党がまっとうなブルジョア民主主義を標榜するならば、自民党の権謀を暴き、小沢さんを守り、不当な選挙キャンペーンを暴露し、一切の政治献金を違法化する政権を樹立しなければならない。そのためにも、小沢さんへの二重基準は許さず、断固として闘わなければならない。それが、政治献金を廃止する唯一の道である。小沢さんを守らないのは、政治献金を廃止する気がない証左である。しっかりと自民党政権を打倒しなさい。
 自民党の回し者たる前原などはさっさと自民党に入らせてあげるべく、除名してあげればよい。ところが、こうしたことが出来ないところに民主党の限界ないし危機がある。




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