共産主義者同盟(火花)

大資本のための「骨太の方針」と小泉政治の意味するもの

流 広志
239号(2001年7月)所収


 前号渋谷論文では,小泉人気の背景として,従来の権力による利益誘導・利益配分から利益を得られない地方資本家と中小企業と都市部大衆が,構造改革によってそういう構造打破を,そういう構造と一体の根回し型(調整型)政治の変革を掲げた小泉首相に期待しているが,小泉首相は,加藤派に代表される構造改革派が,自民党の基盤を都市部に移そうとして,国内農業切り捨てまで踏み込もうとしたが,そこまでの決断できず折衷的な立場をとっていることが指摘されている。それから,農業問題で,@ 遺伝子操作を禁じ,一切の遺伝子組み替え作物の輸入を禁止する,A 農地の集積を促進し,生産農業協同組合を組織していく,B 生産協同組合−流通共同組合−消費協同組合を一貫させ,こうした一貫した「総合」共同組合をいくらでも自然に存在させていく,という三点の具体的方策を提起している。これは,われわれの綱領では,実践部分に相当するものであり,その定式化に向けた提起として検討されるべきものである。
 本稿では,先に発表された経済財政諮問会議の「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(案)」いわゆる「骨太の方針」と外交・安保政策に現れた小泉政治を検討,批判,暴露したい。

「骨太の方針」の中身

 「新世紀維新が目指すもの−日本経済の再生シナリオ」では,バブル崩壊後の90年代の日本経済の停滞を指摘し,経済社会の先行きに閉そく感が強まっている,という悲観的な認識が示されている。しかし,それは,日本の潜在力を発揮できるように,規制・慣行・制度を改革し,司法改革によって自己責任原則を確立すれば,克服できるとしている。短期的には低成長に陥るが,起業・創業促進などを通じて,その後は,民需主導の経済成長を実現するという目標が示される。ここでは,経済停滞の原因は,規制・慣行・制度,だとしている。ところが,経済再生策としては最初に不良債権処理問題の抜本的処理があげられている。つまり,経済停滞の原因は,実は,金融部門であったというわけである。小渕政権の時,日本発の世界恐慌を防止するためとして,金融機関への公的資金導入による不良債権処理を促したはずであった。ところが,いっこうに経済停滞から抜け出せず,不良債権はなかなかなくならない。いまや,その抜本処理が必要だというわけである。その場合に,情報開示,直接金融化,がポイントとしてあげられている。つづいて,@ 民営化・規制改革プログラム,A チャレンジャー支援プログラム,B 保険機能強化プログラム,C 知的資産倍増プログラム,D 生活維持プログラム,E 地方自立・活性化プログラム F 財政改革プログラム,の7つの構造改革プログラムが列挙されている。「3 政策プロセスの改革」では,首相公選制を民意を反映させる仕組として検討すべきとし,タウンミーティングなど政策意志決定プロセスの透明性を高め,政府の説明責任を果たすとしている。「4 中長期の経済財政運営と02年度予算編成」では,01年度の低経済成長→02年度での改革の成果による回復という見通しを述べている。ここでは,計画経済体制みたいに,景気をコントロールしうるかのようである。02年度には,財政健全化の第一歩として国債発行を30兆円以下にするとしている。その後の財政運営の目標をプライマリーバランス(国債関係費をのぞく歳出と歳入の差=基礎的財政収支)の黒字化に置くとしている。だが当面は,デフレのために,金融緩和策をとるという。
 第1章 構造改革と経済の活性化 では,「構造改革と真の景気回復」と題して,「創造的破壊としての構造改革は痛みを伴うが,経済の潜在的供給力を高めるだけでなく,成長分野における潜在的需要を開花させ,新しい民間の消費や投資を生み出す」としている。ここで言う「痛み」が何なのかが注目されている。それから,金融部門の役割が重視され,不良債権処理が経済再生の鍵を握ることが強調されている。「2 不良債権問題の抜本的解決−日本経済再生の第一歩」では,具体策として,RCC(整理回収機構)の機能を拡充して,信託方式で不良債権を引き受けるなどの方策で,不良債権の抜本処理を行うとしている。「3 経済の再生」では,「社会的ニーズに新しい技術を結びつけるため市場の整備など社会的なイノベーションが必要」と主張している。まず,科学技術創造立国・世界最先端のIT国家化,がきて,それから人材立国,教育改革,そして,民間活力発揮のためのNTT改革,公取委の強化,司法制度改革,郵政三事業民営化,証券市場活性化のための税制・制度改革,銀行保有株式機構(仮称)設立,土地の整理・集約化策,労働力再配置,女性の労働参加の推進策,中立的税制,連結納税制度導入,などがあげられている。
 第2章 新世紀型の社会資本整備−効果と効率の追求 では,公共事業の問題点が,硬直性,依存体質,投資規模,にあるとされている。道路等特定財源の見直し,費用対効果を踏まえた見直し,公共事業(ハード)からソフト(=民間主導の制度整備)への政策手段の転換。これまでの「国土の均衡ある発展」から地方の主体性を生かす。受益と負担のバランスをはかり,適正な受益者負担を求める。整備目標の見直しやコスト削減を通じ,公共投資の対GDP比を中期的の引き下げる。第3章 社会保障制度の改革−国民の安心と生活の安定を支える 国民の安心と生活の安定を支えるセーフティーネット では,その基本理念は「自助と自立」とされる。国民一人一人が痛みを分かち合って,制度を支える自覚が大切だと,負担増をにおわしている。サービスの多様化,効率性が強調されている。第4章 個性ある地方の競争−自立した国・地方関係の確立 では,基本理念を「個性ある地域の発展」「知恵と工夫の競争による活性化」に転換するとしている。それから「自立と自律」国庫補助負担金の限定,補助金・地方交付税・地方財政計画により財源を手当する歳出の範囲・水準を縮小するとしている。第5章 経済財政の中期見通しと政策プロセスの改革 では,短期的には不良債権の最終処理のために,デフレ圧力がそのプラス効果を上回るが,財政構造改革によって,公共事業量削減によるマイナスは,「質の改善」で景気への影響を小さくするとしている。中期的には日本経済の潜在力の開花によって,民需主導の経済成長が実現すると予想している。中期的な経済財政計画を策定するとして,そのために財政を含むマクロ経済モデルを活用するとしている。中期的にプライマリー・バランスを黒字にすること,当面,元利払い以上の新たな借金を行わないこと,諮問会議→閣議決定→内閣基本方針という手順をとること,公共部門での企業経営的手法の導入による効率的で質の高い行政サービスの提供,民営化,民間委託,PFIの活用,独立行政法人化,などの諸方策の活用の検討,があげられている。
 第6章 来年度予算の基本的考え方 では,経済発展の期待される分野へ重点配分し,不要な予算を削減し,国債発行額を30兆円以下に抑え,聖域なく歳出を見直し,@ 循環型経済社会の構築など環境問題への対応,A 少子・高齢化への対応,B 地方の個性ある活性化,C 都市の再生−都市の魅力と国際競争力,D 科学技術の振興(ライフサイエンス等の4分野への重点化等),E 人材育成,教育,F 世界最先端のIT国家の実現,を重点にするとしている。これらは具体性に欠ける抽象的スローガンにすぎない。

大資本が元気になるだけの「骨太の方針」と小泉政治の問題点

 「骨太の方針」は,バブル崩壊後の経済停滞を打破する鍵を,公共部門の民営化,行政改革,司法改革,規制緩和,競争化,効率化,に求めている。マクロ経済モデルを使う形で,中期的な経済計画を策定し,均衡を目指すものとされている。「痛み」が生じるのは短期的な調整過程での一時的な不均衡がもたらすものとされている。たとえば,第1章の冒頭で,創造的破壊=構造改革は痛みをもたらすが,経済の潜在的供給能力を高め,成長分野の潜在的需要を開花させ,新しい民間の消費や投資を生み出すとしている部分である。それは,従来のケインズ主義の財政出動などによる需要拡大策ではなく,供給構造の改革による需要創造という新自由主義経済学的な考えを基本にしている(古典・新古典派経済学の公準であったセイの法則,「供給はそれ自らの需要をつくりだす」)。
 構造改革については,貯蓄優遇から投資優遇への金融の転換,直接金融重視のための証券市場の活性化,財政均衡主義,社会保障制度の「自助と自立」,地方の「自立と自律」,司法改革での自己責任原則等,理念の転換が打ち出されている。そこには,これまで,民間が国に依存し,国が能動的経済主体として経済を主導してきたとする認識がある。それは経済を停滞させる元凶であったが,構造改革によって克服され,活力ある経済が生み出されることになっている。
 そもそも膨大な赤字国債発行による財政拡大政策を求めてきたのは,あれこれと経済対策を求めてきた都市部に拠点を置く大資本である。農業や地方に補助金をばらまいたり,公共事業を行ってきたのは,都市部での資本家階級だけでは選挙に勝てないからであった。すなわち,資本家階級が抽象的平等を基礎とする近代議会制度において多数をしめるためには,単独の階級によってしめられるむき出しの階級政党ではなく,他の階層を含む国民政党を実現しなければならなかったのである。55年体制では,イデオロギーを規準にして,資本家階級ヘゲモニーの自由民主党と労働者階級(正確には,組織労働者)ヘゲモニーの社会党という二大国民政党の議会における対立という形を通して,革命的プロレタリアートを除く諸種の階級・階層の利害が議会で代表されることになったのである。
 「骨太の方針」は,抽象的理念の提示と政策の方向性を示すに止まっているものが多い。構造改革の必然性,必要性,唯一性を強調し,人々に痛みへの覚悟を自覚させようという狙いが露骨である。それ以外に手はないというわけである。それが成功例として念頭においているのは,サッチャー政権のイギリスとレーガン政権のアメリカの例であることは明白である。しかしそれは,英米での階級階層分裂を拡大し,再生産する構造への転換であった。そうなることは,「骨太の方針」で,医療改革,社会保障改革,地方改革,等々の領域で掲げられた「自立と自律」「自助と自立」という理念が,効率化,競争促進,受益者負担増,増税,サービス低下,等々を結果することを意味することで明らかである。
 それは同時に,司法改革における自己責任原則への転換をもともなう。というのは,公的部門の縮小に伴って,市民社会的自治領域が拡大するが,それによって,市民社会内で自治的に解決しなければならない争いが増えるからである。司法改革では,そのために,陪審制度などの市民参加の司法への転換や法曹人口の増員など新たな予算措置を必要とする改革を提示している。同じ理由で,治安諸経費が増大し,入管職員の増員などの入管体制強化などが必要となる。
 「骨太の方針」は,金融独占資本を不良債権を処理して身軽にしてやるために,それにともなう犠牲を弱者にしわ寄せし,階級・階層格差を拡大,固定し,ブルジョア階級利害の飽くなき追及を,競争原理や自己責任,社会保障制度での「自立と自助」,地方の「自立と自律」などの口当たりのいい理念の下に,押し進めようとするものに他ならない。それはブルジョア階級が元気になって,その他の階級・階層の多くに元気さを失わせる痛みを押しつけるものである。すでにお荷物となった特殊法人や公共事業や公的事業を多少整理するぐらいでは,放漫財政で垂れ流した巨額の赤字国債=借金を減らすにはわずかな効果しかない。一方で歳出を削減しても,他方で司法改革などにともなう新たな治安経費などの増大が必要となる。現在の改革論議の全体像からは,一方で減らして他方で増やすという実際がわかる。「骨太の方針」自体でも将来の増税や負担増は明らかである。「骨太の方針」と構造改革路線には,大資本の国際競争力を強化するために,借金を減らして身軽にしたり,税負担を軽くしたり,技術や人材を確保したり,本拠を置く都市環境を整備したり,と,公共サービスを,自分たちのために重点的に使わせようという意図が露骨に現れている。ところがそれは国民全体のためだとかこれしか経済再生の道はないだとかいうデタラメが,経済学を装った経済イデオローグなどによって宣伝されている。
 供給サイドの改革によって需要が呼び起こされるという楽観論が幻想にすぎないことは,これを実際に行った英米で,それによって引き起こされた一時的なブーム以上に景気後退が深刻化したという事実が証明している。1990年代の英米などの先進資本主義諸国での経済成長は,旧ソ連・東欧諸国市場の開放やアジア市場,中南米市場などの世界市場拡大によるところが大きかったと考える。1990年代半ばにこれらの市場で相次いだ経済危機と市場縮小が,今日の先進資本主義諸国での経済停滞の要因となったといえよう。したがって,内政でなんとかしようとしても実際には打つ手がないので,無方策を隠し騙すために,パフォーマンスが演じられ,抽象的スローガンが掲げられているのである。
 渋谷氏が指摘するように,小泉人気に込められているのは,自民党型政治の終了であり,その解体であり,新たな政治の登場の願いと期待である。これらを壊せば何かいいものが生まれるのではないかと期待しているのである。そうした世論の支持が頼りの小泉政権は,そうした期待に応えることが生命線である。「骨太の方針」はそれらの結果をもたらす方向で書かれている。小泉首相は,「骨太の方針」を閣議決定し,自民党が了承したことで,これをできなければ,ピエロになるという立場に立った。しかしながら,それは,金融独占資本主義のための政策を露骨に実現するための諸方策あるいは無方策であって,多くの人々にとって,零落や犠牲を強いるものでしかない。
 人々は,小泉流パフォーマンスにいつまでも騙され酔っていることはない。すでに,徐々に支持率が下がりつつある。人々は目ざめつつある。小泉政権が,人々の政治意識を目覚めさせ,政治に関心を呼び起こし,政治参加要求を引き出したことは,闘うプロレタリア大衆にとって好機とも言える。小泉政権にあらわれたブルジョア政治を批判・暴露し,この隘路から人々を脱出させるためには,プロレタリア革命が必要なこと,自国帝国主義を打倒して国際主義的社会を実現することが必要であること,協同社会への発展に向けた社会革命が必要であること,等々の理解を広めなければならない。

小泉政権の外交・安保政策とブッシュ政権の戦略

 小泉政権は,初の日米首脳会談において,永続的な日米同盟をうたい,地球環境温暖化防止京都議定書問題では,批准に反対しているアメリカ側に理解を示した。沖縄では,出発直前に,沖縄駐留米空軍の軍人による女性暴行事件が起きたが,それに対してブッシュ大統領は遺憾の意を表した。小泉首相は,両国の国民感情を考えて冷静に対処すべきだと他人事のような冷たい対応を見せた。被害者を第一に考えて対処すべきところが,加害者側に厚く配慮する姿勢を見せたのである。1995年の沖縄での米海兵隊員による少女暴行事件を契機にした県民運動によって,日米地位協定での運用改善による米軍人による重大犯罪についての起訴前の日本側への身柄引き渡しがアメリカ側の好意的考慮によって可能になった。だが,起訴前の身柄引き渡しは沖縄では実現されなかった。駐留沖縄米軍は,日米地位協定による特権的地位と扱いを当然とする態度をとり続けてきたのである。
 それに対する日本政府=小泉首相の見解は,日米地位協定の改定がすぐにはできない以上,「改善」した運用を速やかに適応して,容疑者の米兵の早期の身柄引き渡しを要求する他はないというものであった。それに対して,アメリカ政府内部では,軍の反対論を国務省が日米同盟重視という観点からねじ伏せて,最終的には大統領近くの政治判断で,身柄引き渡しが決定されたといわれている。このケースでは,沖縄の要求にそう形で実現したけれども,対中敵視政策を取り,アジア太平洋地域での市場争奪戦の勝利を目指し,二正面戦略を見直してアジア重視の戦略転換をはかっているブッシュ政権の軍事戦略からすれば,沖縄の戦略的重要性が高められることは必至であり,したがって,沖縄の基地負担が重くなることは明らかである。思いやり予算,日米地位協定で与えられている特権などは,今後も長期にわたって沖縄に居座るために都合よくできている。
 問題の根本的解決には,安保破棄による米軍基地撤去が必要である。小泉政権の外交・安保政策は,それとは逆に向かっている。それでは,いつまでも実現されない米軍の綱紀粛正のかけ声がむなしく繰り返されるだけに終わり,沖縄の苦悩は深まるだけである。沖縄の米軍基地の整理・縮小は,遅々として進まない。普天間基地の名護市辺野古沖への代替基地は,長期間使用可能で機能強化された最新基地として建設する計画なのである。日米首脳会談・日米外相会談では,沖縄県の15年の使用期限要求をアメリカ側に強く迫ることはなかった。沖縄の反基地闘争・自立解放闘争の発展が解決の重要な要素である。
 ブッシュ政権は,台湾に大量に武器を売却したが,それが中国側での軍備拡張を呼び起こすことは必至である。防衛庁の今年度版『防衛白書』は,中国と台湾の軍事バランスを分析して,中国には台湾を本格的に上陸・制圧するだけの軍備はなく,台湾側の方が装備の水準では中国軍のそれを上回っていると結論している。これと違ってブッシュ政権は中国の潜在的脅威を強調して,台湾にパトリオットミサイルを売却し,日本には「日米新ガイドライン」に基づく日本側の後方地域支援から踏み込み,日本政府が憲法上行使できないとしてきた集団的自衛権行使の容認を迫っている。それに対して『防衛白書』は,多角的な議論を期待するとしている。小泉政権では,田中外相が新ミサイル防衛計画に疑念を表明しているが,政府としては,研究には理解するという公式見解をとっている。中谷防衛庁長官は,日米防衛閣僚会談で,新ミサイル防衛計画が実施される段階になれば,日本でのミサイル防衛の運用は自主的に行うと述べた。ミサイル迎撃実験は,失敗を続けており,実用化のめどはまったくたっていない。軍需産業のために膨大な無駄が繰り返されているわけである。この計画の狙いは,圧倒的な軍事力を背景にした世界市場での覇権の確立にあり,ミサイルからの資本の防衛にある。なぜなら,ミサイルの命中精度が高ければ,敵対国が重点的に狙うのは,軍事施設や研究施設や軍需工場や重要な生産施設や政治施設,重要な公共的機関,軍事戦略上重要な運輸・流通機関や物資の集積地,などであり,一般市民の住宅地などではないからである。国民全体を守るためというのは大義名分であって,ミサイル防衛計画が防衛したいのはブルジョアジーの重要施設などなのである。
 さらにブッシュ政権は,原発推進,CTBT(全面的核実験禁止条約)批准拒否,地球温暖化防止京都議定書批准拒否,迎撃弾道弾(ABM)制限条約撤廃,などを相次いで表明し,中国ばかりではなく,EU,ロシア,との対立姿勢を強めている。また,日米同盟重視とはいいながら,国内鉄鋼業界からの要求に応じて,日本からの鉄鋼輸入制限強化を打ち出している。世界から孤立しても,一部同盟国を引き寄せて,世界市場競争での勝利を目指しているのである。EU議会では,イギリス・カナダ・ニュージーランド・オーストラリアが参加するアメリカの軍事衛星や軍事レーダーなどを使った国際盗聴網(エシュロン)が暴露され問題になっている。米軍三沢基地にあるレーダーがエシュロンの通信傍受用に使われているともいわれている。
 盗聴だろうと軍事的覇権だろうとなんだろうとあらゆる手段で帝国主義的利害を貫こうとするブッシュ政権と共にうまい汁を吸おうという日本の独占資本と政府は,同時に自らの独自利害もあるために,有事立法や自衛隊の増強や装備の革新,メキシコなどとの二国間自由貿易協定締結の動きの加速,アジア通貨構想などをぶちあげつつ,世界市場をめぐる熾烈な競争戦を戦うための力をつけるための,構造改革路線を押し進めようとしている。小泉政権の構造改革とは,国内の一切の人的物的資源をこの目的のために大資本が自由に使えるようにするための改革であって,けっして一般「国民」のためのものなどではない。 それに対して,ソ連・東欧体制崩壊の総括を踏まえた上で,過渡期を社会主義に発展させる革命的方策を策定・実現すること,社会革命すなわち社会諸関係を革命していく社会運動の持続的発展が必要であること,それには協同組合型の結合が重要なモデルとなること,国独資型は過渡点にすぎないこと,この社会革命が課題とする貨幣・商品の廃絶・止揚は,政府の指令や命令によってなくせるものではなく,社会諸関係の変革・止揚することによって実現するほかはないということ,したがってこの社会革命には文化革命が伴わなければならないこと,この課題のためには,レーニンが言うように,プロ独は手段でしかなく,ブルジョアジーの収奪とその復活を防ぐほかには,国際主義的な任務を除けば,統制などの消極的な仕事しか残されないこと,などを強調しなければならない




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