共産主義者同盟(火花)

金融資本の現在と戦術について 

流 広志
227号(2000年7月)所収


 さる7月4日,大蔵省から金融行政の検査・監督機能と企画・立案機能を分離して集めた金融庁が発足した。すでに日本銀行法の改定で日銀の独立性を強める規定がなされており,これで大蔵省は財政機関としての性格が強められることとなった。しかし依然として大蔵省には資金運用部の財政投融資という国家の資本機能の権限が残されている。1985年プラザ合意から始まったバブルと1990年代におけるその崩壊から続く長期不況の中で,金融機関の不良債権問題の深刻化,大蔵省幹部の接待スキャンダルの発覚,そして一行たりともつぶさないとしてきた都市銀行(北海道拓殖銀行)の破綻,4大証券の一角をしめた山一証券の破綻,中小金融機関の相次ぐ破綻,日本長期信用銀行・日本債権銀行の経営破綻,等々,金融界を見舞った激動はすさまじいものがあった。さらに,この間,中小金融機関の合併や破綻救済のための大手金融機関への併合,都市銀行の合併や国境を超えた相次ぐ提携,生命保険会社の破綻,中小証券業の破綻,東京証券取引所の株式会社化,ナスダックジャパン市場の開設,等々という激動がおそっている。
 この間に,アメリカでは,貿易赤字を増大させながら長期の好況を謳歌し,インターネット産業における先進国としての世界市場の独占状態をつくり出した。しかし,1997年夏には,世界経済の成長センターとまで呼ばれたアジアでタイのバーツ危機を引き金にしたアジア経済危機が発生し,それはロシア,中南米と拡大した。日本経済はその影響を受けて好況に向かうかと思われた経済が失速しマイナス成長におちいった。この時は,アメリカでも大規模投機集団の破綻を契機にした金融の破滅的危機の一歩手前の危険な状態に追い込まれた。
 日本では,財政政策による景気刺激と破綻金融機関の税金投入による救済が最優先課題として政治の焦点に据えられ,自民党小渕政権は,自由党,公明党との連立に踏み込み,体制を固めると同時に強固な政策遂行力を高めるための,また危機に対応するための国家主義的な諸法案(日の丸・君が代国家国旗法,新ガイドライン関連法,盗聴法,団体規制法,など)を圧倒的多数の数の力で国会を通した。そして,国会に憲法調査会を設置して,改憲に向けた動きを本格化させた。このような政治動向の背景には金融資本の動向がある。
 小渕首相の急死を受けて自民党幹部(5人組)の密室協議によって森首相が誕生したが,「神の国」発言などの失言をくり返し,内閣支持率急落の中,衆議院解散総選挙にうってでたが,与党3党は大幅議席減の敗北を喫した。戦後2番目に低い62%の低当票率にもかかわらず自民党は30議席も議席を減らし,とりわけ都市部で大敗した。事前の,低投票率は組織票の多い自民党に有利という予測は,神話に過ぎなかったわけである。しかも公明党=創価学会との選挙協力にも関わらず敗北したので,惨敗といってよい。選挙の際に,自民党は積極財政策の継続を訴え,また予備費2000億円の執行をアナウンスし,地方で相変わらずの公共事業のばらまきを訴えた。選挙結果は将来の増税の道の選択であった。
 その間,今年1月〜3月までのGNPの伸び率が高くIT産業を軸にした企業の設備投資が大幅に伸びたというデータが発表され,本格的な景気回復の兆しが現れたとして政府の景気判断が好転した。それと同時に,国地方合わせた借金総額が645兆円に達することが明らかになった。雇用,消費の改善幅は極めて小さいものに止まっている。
 一方,デパート大手の「そごう」が経営破綻し,「そごう」デパートは経営再建のためとして取引銀行に債権放棄を求めた。新生銀行(旧日本長期信用銀行)には1000億円余りの債権放棄が要請された。一時国営化された日本長期信用銀行が新生銀行として払い下げされた際の約定によって,約2000億円の債権を預金保険機構が引き受け,そのうち 970億円の債権放棄が決定された。税金によって,民間企業の直接の救済が決定されたのである。この当事者たち(「そごう」経営陣,新生銀行,預金保険機構)に抵抗があまりなくすんなりと進んだことからあきらかなように企業のモラルハザードは広範囲に及んでいると見て間違いなさそうだ。


 この間,日銀のゼロ金利政策の解除が議論されるようになってきた。6月末から東京市場の銀行間取引の規準金利(TIBOR)が急上昇し,国債(10年物)の長期金利も上昇し始めている。全体的に景気回復の傾向が確実となったとする判断から,コールレートを実質ゼロに抑えてきたゼロ金利政策解除の条件が整いつつあるというわけである。
 株式はどうだろうか。まず株価そのものについて確認しておきたい。株価は一株当たり配当÷利子率によって表される。なぜなら,株式は,将来の資本の剰余価値にたいする所有名義に他ならないのであり,この所有名義がもたらすであろう収入(配当)の増減は,空資本の増減を表し,それに対して現行利子率によって計算されたものにすぎないからである。けだし「空資本の形成は資本化と呼ばれる。すべて規則的に反復される収入は,平均利子率で貸出される一資本のもたらすべき収益として平均利潤率にしたがって計算されることによって,資本化される。たとえば,年収入は100ポンド,利子率は五%とすれば,100ポンドは,2000ポンドの年利子となるであろう。そこでこの2000ポンドが,年額100ポンドにたいする法律上の所有名義の資本価値と見なされる。そこで,この所有名義を買う者にとっては,この 100ポンドの年収入は,実際に彼の投下資本の五%の利子を表す。かくして,資本の現実の価値増殖過程との一切の関連は,最後の痕跡に至るまで消え失せて,自己自身によって自己を増殖する自動体としての資本の観念が確立される」(『資本論』第三巻第5篇利子付資本 第29章銀行資本の構成部分 岩波文庫 222頁)という擬制資本に共通する資本神秘化などの一般的な性質を持っているのである。ただし株価を規定する要因はこれだけではないことを確認しておきたい。
 このことから,日銀のゼロ金利政策あるいは低金利政策が株価にたいしてどのような影響をもたらしたかということがわかる。すなわち,1987年以降,資本の収益が落ち込んだことによって空資本の縮小が起こり,株価を規定する要因である計算式の分子が小さくなるために,分母たる利子率を下げなければ株価が低下するということである。それが大規模投資家である金融機関や年金基金などに与えるダメージが大きいのはいうまでもない(なお,株価低迷のために含み資産が減少し,大幅な赤字に陥っていた企業年金財政がこの間の株価の上昇によって黒字に転換したという報道がつい最近あった)。また,日銀は株式を担保にして商業銀行への貸出を行うのでそれは日銀の資産として存在している。日銀のゼロ金利政策の直接のきっかけは,三洋証券の破綻から北海道拓殖銀行の破綻,山一証券の破綻という都銀,証券会社の破綻によるコール市場崩壊の危機にあった。この危機に対応するため,日銀は,コール市場の金利を費用を引いた実質でゼロにまで引き下げ,コール市場に対して豊富な資金を流してきた。ところが,設備投資が増大してきたことによって,現実資本にたいする投資が拡大し,資金需要が増大してきたことが明らかになってきた。企業業績が改善し,資本収益が増大してきたことによって,分子たる配当が増大することがはっきりしてきたので,分母の利子率が上がらなければ,膨大な空資本が生まれることになる。そうして生み出される巨大な擬制資本は純粋に幻想的であるが,それに対して現行利子率で株式の収益が計算され打ち出されるので,その部分がバブルとなるのである。それは投機にかっこうの活躍場を与える。その崩壊が与えるマイナスはすでに経験済みである。
 そこで速見日銀総裁は,わざわざバブル崩壊の総括を今頃になって提出し,その中で,プラザ合意後の円高不況への対策としてとられた低金利政策を1989年夏以降も継続したことがバブルの原因となり,それがバブル崩壊−長期不況をもたらしたとして,過去の日銀の政策を批判し,それを教訓として,早期のゼロ金利解除をにおわせているのである。
 ゼロ金利解除の影響はアジア経済に大きな影響を与える可能性がある。一般的には,日本の金利上昇はアジア諸国の株価を引き下げる傾向をもつ。それに加えて相対的な金利水準の変動は,現在のアメリカに投資資金が集中している世界的な資本の流れ方に影響を与える可能性がある。そのため6月28日の日銀政策委員会・金融政策決定会合では,ゼロ金利解除の条件として国内経済の改善と合わせてアメリカ経済にマイナスの影響がないということが改めて確認され,それらを見極めるとしてゼロ金利解除が先送りされたのである。日銀の金利政策は,アメリカ経済の動向と密接に関係している。サミット蔵相会議では,欧米からゼロ金利解除すべきではないという注文がつけられた。


 1990年代の日本の金融行政は,預金保険機構にしても金融再生委員会にしても山一証券への日銀特融にしても日本長期信用銀行・日本債権銀行の一時国有化にしても過去の負の遺産の清算に終始するものであるといえる。
 それにたいして,金融機関と大蔵省の検査・監督部門の癒着が問題となって大蔵省から検査・監督部門を切り離して発足した金融監督庁は,さる7月3日に財政金融分離という理念にもとづいて大蔵省金融企画局を統合した企画立案部門の総務企画部を合わせた金融庁へと改編された。金融監督庁は破綻金融機関に早期是正措置を次々と発動し,それは金融機関の合併・合弁の動きを加速させる要因ともなった。金融庁は,橋本内閣で決定された来年の新省庁体制の発足に向けた財政・金融分離による大蔵省と金融機関のいわゆる護送船団方式の解体と透明で公正な金融ルールの確立を図るものとされている。IT化の結果,とりわけアメリカでは金融工学とよばれる金融技術が開発され,擬制資本の運動は複雑化している。資本市場・金融市場はますます怪物的な様相を深めており,無政府性が支配している。金融庁は市場開放を進めた結果として否応なくそうした性質を深めざるを得ない現実に適切に対処することができるのだろうか。それは過去の負の清算という今日の金融政策はもちろん資本にたいしてはじめから融和的な今日の政治によっては,それから発生する危険を避けられるわけがない。プロレタリア大衆的な方策のひとつは,国際的な金融資本の運動の全面的な解明と金融資本市場の実態の分析をなし,その情報を一般に開示して広範な意識にのぼせることによって意識的コントロールの下に置くという実践によってその危険から人々を解放することである。
 また小渕政権が取った赤字国債を大量発行してのなりふりかまわぬ景気対策は,これも過去のマイナスの清算であり,現状を悪化させないためのつなぎの税金投入である。国債は将来の税金の一定部分にたいする請求権の所有名義であり,純粋に幻想的な空資本であり,国家は使ってしまったものに利子をつけて将来に債権者に返還しなければならないのである。こうして現政府の財政政策によって国債の発行額が巨大になっていくのは火を見るより明らかであり,またかつてのような高度成長がありえないとすれば,景気回復後の現在の税制の下での税収の自然増などで返せるものではないということは簡単にわかる。しかし,先の総選挙では,都市部の有権者はそれにはっきりと気づいたようだが,公共事業の受益者である地方の有権者の方は将来の増税の道を選択してしまったのである。
 国債には6ヶ月から20年の償還期限のものがあり,国債流通制限の自由化(規制緩和)と金利自由化の措置をきっかけとして多様な金融商品が生み出されるようになり,バブル期にはじつにその70%が銀行・証券会社の機関投資家の手中でマネーゲームの有力な手段として取り扱われていたのである。その後始末を増税によって負担させられようとしているのである。


 こうした事態には出口がない。なぜなら国債によって得られた資金はすでにつかわれてしまったからである。国には償還期限には元本と利子を国債保持者に支払わなければならないという債務返済の義務だけが待っているのであるが,それは租税から支払われる以外ないのである。アメリカは,双子の赤字から脱却して財政赤字から財政黒字に見事に転換できたではないかというアメリカ・モデルの赤字脱却法があるではないかという人があるかも知れない。しかし,アメリカの場合は,世界市場のルールを自国に有利なように,ということはアメリカ資本に有利なように強制しやすいという特殊な条件があるので,アメリカ・モデルを単純に日本の現状に当てはめられないということは,グローバリズムに対するこの間の分析・評価,議論,批判等によって明らかになった。アメリカは1985年のプラザ合意で日本に円高を容認させたように,自国経済の利害を資本主義世界利害として他国に政策を強制することができたが,今日では日銀は独立性を認められているにも関わらず,アメリカのゼロ金利政策継続の要求に屈服して独自の自律的な金利政策を自由に取れないという状態なのである。アメリカは,日本市場での投資価値の減少や為替の変動リスクの増大を嫌い,日本の経済政策に注文を突きつけているのである。
 そして,この間の自民党あるいは連立政府が立て続けにうってきた景気対策と称する税金ばらまきは,未来への投資というものではなく過去のマイナスの清算と現状維持を目的とするつなぎ資金の供給にすぎないものが大部分であることを見逃してはならない。これは高成長率もしくはインフレ時ならば,後からその分を上回る税収増などによって回収できもしようが,現状ではそれはありえないことははっきりしている。
 また問題なのはこのような過去の清算がモラルハザードを生み出し促進していることだ。その例として忘れてはならないのが国鉄分割民営化である。まず,国鉄累積債務問題に対してその責任を重く問われるべき政府運輸省国鉄当局・自民党などの当事者たちが責任らしい責任をとっていない。自分の財産を出して債務弁済する者などなく,民営化すれば責任がないといわんばかりの厚顔無恥な態度のままである。一方では国労組合員らを狙った不当労働行為については法的責任なしと居直りながら,他方ではたばこ税増税による国民の一部への負担転嫁を容認するJR資本のモラルハザードの進行は目に余るものがある。


 金融資本はそれ以上にひどいモラルハザードに陥っている。金融資本は今や国庫をも食いものにしつつ,その寄生性と腐朽化を深めているのである。
 さきに金融資本が強く要求して実現した持ち株会社の解禁は,GHQの占領策としての財閥解体=経済民主化の措置によって禁止されたものを先の法改定で解禁したものだが,金融資本はそれを金融持ち株会社の設立による企業統合・合併の推進を図り,独占資本の所有権集中による経営安定化を図るテコとしようというのである。
 そして日本の金融資本は,バブル崩壊後の長期不況を利用して中小小売商業や零細下請け中小工業資本を破綻に追い込み収奪して従属化させ,資本の集中と集積を強力に押し進めると同時に国際的な合弁・合併・提携を加速させつつ国際トラストの形成・再編をすすめ,世界市場をめぐる争奪戦を激しく展開し,帝国主義世界秩序の下での分割戦を加速させているのである。
 この国際トラストの形成と再編の過程は,多国籍企業の形成・再編過程と密接に関連している。国際的な提携と合併の動きは,世界規模での巨大トラストの形成とトラスト間の共同と競争の激化を促進している。例えば自動車産業を見ても,トヨタ・GM連合,日産・ルノー,ダイムラー・クライスラー連合,フォード・マツダ連合などの国際トラストが誕生しており,それらは経営危機に見舞われた旧東欧や韓国などでの企業買収や資本提携などによる現地自動車企業の獲得競争にのり出しているのである。金融資本の国際トラスト形成・再編,提携,合併,買収などの動きも進んでいる。とりわけ,単一通貨ユーロを導入したEU域内での企業統合の動きは激しい。そしてEU統合に向けて,証券取引所の統合が決定された。
 こうした国際的な資本の集中と集積は,規制緩和,自由化による自由競争の渦に投げ込まれた中小資本の収奪によっても加速されたのである。破綻した中小資本をいかに低廉に手中に納めたかは,中小金融機関の破綻処理を税金で賄ったり,不良債権処理を政府系機関が引き受けたり,破綻金融機関の吸収合併が救済名目で行われた90年代の日本の状況が見事に証明している。
 さらに現代では,旧ソ連・東欧地域への直接投資の開始と市場争奪戦の激化,アジア経済の復調にともなうアジア市場の再分割戦の再強化,朝鮮半島や中国内陸部などの未開拓市場の開拓,中東における原油市場の獲得戦の激化,カスピ海油田をめぐるアメリカとロシアの対立,アフリカにおける天然資源や農産物をめぐる競争戦,中南米をめぐる資本間競争の激化,等々の帝国主義市場競争の激化がもたらしている世界的激動の火種は,ソ連・東欧体制崩壊によって全面的に露骨に表面に現れてきている。こうして,国際トラスト間の激しい利害対立から帝国主義間対立が絶えず生み出され,それは平和から戦争への交代の圧力をなしている。そうした帝国主義戦争の可能性をはらむ一時的な平和の時代が現代である。
 こうした一時的平和の時代における共産主義運動とプロレタリア運動の戦術として,未組織労働者の組織化とブルジョア的戦争反対,ブルジョア,小ブルジョア政治との政治闘争,プロレタリア大衆の自然発生的諸運動への革命性の刻印,プロレタリア大衆の参加・教育・訓練による統治階級としてのプロレタリアートの多数派の形成,そしていかなる事態にも対応して首尾一貫してプロレタリアートの政治社会文化革命を前進的に推進しうる共産主義者とプロレタリア大衆の党派の創出・・・・がある。しかしこのような戦術は,平和から戦争への急激な転換の際には,当然のことながら別の革命的戦術と速やかに交代されなければならないということはいうまでもない。
 このような戦争への傾向をもつ相対的一時的な平和という現代世界の特徴に対して,国際金融資本による世界の共同搾取の体制というカウツキー流の超帝国主義的平和をみることはできない。確かに,第二次世界大戦以降,半世紀以上の間に世界戦争は起こっていない。この長い相対的な平和の時代は,1917年ロシア革命から東欧,中国などの社会主義政権の登場の衝撃が資本主義世界を襲い,世界資本主義対世界共産主義の対立というベールの下での資本競争の自己規制が働いて,帝国主義諸国に帝間矛盾の協調的解決を強いてきたからなのである。この旧植民地諸国や発展途上国はこのような冷戦体制を利用してどちらかの陣営について援助や支援を得て工業化を進めようとした。ところが冷戦が終わるや事情は一変した。帝国主義に世界市場再分割戦を抑制する強力な動機は失われた。これまでも帝国主義の侵略と戦争は平和や安定や民族解放を名目にして行われたのであり,そうした欺瞞によって人々を欺いていることを徹底的に暴露しなければならない。
 そして国際金融資本は,傍若無人の活動によって破綻に追い込まれたタイの例が示すように,資本主義世界の現状の平和と安定から戦争と激動への急激な転換を引き起こす原因となっているのであるが,これらの間の競争と対立の激化は,同時に時には仲良く搾取するための一時的協定を結びながら進行するために,平和と安定を表すかのような外観を呈するためにプロレタリア大衆の目を欺くのである。しかし,平和や安定や民族解放や人道という名目が掲げられたが,実際には湾岸戦争が石油をめぐる市場再分割戦であったように,またユーゴへのNATOの空爆がカスピ海などを含む西欧帝国主義の東方拡大の意志表示であったように,帝国主義諸国の軍事介入,戦争には,侵略,市場獲得戦,市場再分割戦という性質が貼り付いているのである。


 この間の日本の金融資本の国家などの上部構造と密接に関係しつつその性格や性質を規定する実態や国際的なトラスト化の動向や帝国主義の市場再分割戦との深い関わりなどの解明を試みた。共産主義者としてのわれわれは,この一時的相対的な,戦争を準備しつつある平和の時期を利用しつくす戦術を駆使して,戦争と侵略反対,プロレタリア的組織の形成,自然発生的プロレタリア大衆の諸運動への革命性の刻印,共産主義者とプロレタリア大衆の党の建設,国際主義的諸任務の実践などを意識あるプロレタリア大衆と共に押し進めていかなければならない。
 ソ連・東欧地域の体制崩壊以後の新規市場の争奪戦の激化,国際トラストの形成と再編の活発化,国際トラスト間の対立が激化しつつあり,とりわけ1997年夏以降の世界恐慌の可能性を強くはらんだ世界的に連鎖した経済危機が,世界金融恐慌の現実性,その波及スピードの速さや中小規模の国民経済を破壊するすさまじい威力を見せつけた後には,より戦争を意識した戦術が必要なことはあきらかである。そしてまた同時に,プロレタリア的な社会諸関係を形成する共産主義的な協同組合的な生産・消費・流通組織の形成をもって,恐慌と戦争,破壊と搾取の資本制社会を共産制社会に置き換える諸実践を発展させることが必要である。




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