共産主義者同盟(火花)

『火花』201号渋谷論文への若干のコメント

流 広志
202号(1998年6月)所収


 前号『火花』において渋谷さんは,197号の拙稿の一部での現在のアジア経済危機の原因についての分析に自らの認識を対置している。それについて,若干のコメントを返しておきたい。
 この問題における渋谷さんと私の認識の相違と言われているのは,「巨大債権国」の意味の取り違えからはじまっていることに気がついた。
 私は,「巨大債権国」とは巨大債権を持つ政府のことをさして使ったつもりであった。要するに私の考えでは,日本は巨大債権国であるがゆえにバブル崩壊を持ちこたえられたというのは,巨大債権の中身の多くは米国債等であり,したがって簡単化していえば,日本の場合は,現金化できる対外保有資産があり,アジア諸国が陥っているような「決済危機」−対外支払いの不可能化は起こらないという意味である。渋谷さんはどうやら「巨大債権国」というのを,金融資本が巨大な債権を持っている国と読んだようだ。それで以下の部分は,的が外れているということがわかる。
 一方で渋谷さんはバブルとは「過剰流動資本」イコール利子生み資本であると規定しているようにみえる。「本稿では,『過剰流動資本』あるいは,利子生み資本のその後の動きを分析する」(『火花』201号 2頁)と述べているのである。ここで「過剰流動資本」と「利子生み資本」を同一のものとして扱っているのは厳密に言えば問題があろう。
 これはこれで意味のある論点と思われるが,それは渋谷さんからは提起されていないので,指摘の部分については「巨大債権国」を上述の意味と認識して改めて拙稿を読み直してみて下さい。
 ドル=ベッグ制は変動相場制に移行し世界市場により深く統合されたのであり,アジア諸国の経済危機の世界市場への波及を避けられるわけではないことを指摘しておきたい。
 「経済成長率を重視する現在の新自由主義経済学・・・・」については,具体的にはIMFを念頭においており,実際にIMFはアジア経済の実情について認識を誤ったことを公式に認めている。IMFは,危機がはっきりとするまでは,アセアン諸国は順調に経済成長を続けているので大きな問題はないと繰り返し述べていたのである。渋谷さんがIMFの考えをどうして私の考えと同一視して自身の認識を対置しているのか理解にくるしむ。




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