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朝 鮮 半 島 情 勢 の 流 動 の 中 か ら,
共和国民衆の現実をとらえ,連帯を求めよう!

プロレタリア行動委員会
154号(1994年6月)所収
火花パンフレット『朝鮮北部プロレタリアートとの団結を求めて』所収


 「核開発問題」を焦点として,朝鮮半島情勢は激しく動いている.アメリカ政府を筆頭に帝国主義諸国は,“経済制裁”へ踏み切る構えを見せており,さらに軍事力を行使する姿勢もちらつかせている.これに対して,共和国(朝鮮民主主義人民共和国)政府は,「経済制裁は宣戦布告と見なす」とし,全面戦争−韓国への軍事進攻に踏み切る,という態度表明をもって応えている.
 そして,この情勢に対応する形で,日本の左翼運動においても,一斉に“朝鮮侵略戦争反対”等のスローガンが前面に掲げられるようになっている.

II

 ここにおいて,私たちは一つの問題提起を行いたい.
 それは,今日掲げられている“朝鮮侵略戦争反対”等のスローガンの中に,共和国社会に現実に生き,生活している民衆の存在がとらえられていないのではないか,むしろあえて視野の外におかれてしまっているのではないか,ということである.そして,そうした,民衆の実際の姿に接近し,結びついていこうとしない「政治」「政治運動」の在り方は転換されねばならないのではないか,ということである.
 「反戦」「反政府」「反帝国主義」といった政治の枠組みがまずあり,民衆をその枠組みに動員しようとする発想・運動スタイルは,民衆を統治の対象としてとらえ,民衆の上に君臨していくような政治へと,容易に転化していくであろう.
 日本における反戦運動,反帝闘争の高揚のために,朝鮮半島情勢の危機的展開を利用するという,旧来の運動にありがちな発想・態度は清算されねばならない.

III

 私たちは,今日の朝鮮半島をめぐる国家間政治の動向−政府間の種々の駆け引き等−の中にあって,なによりも,民衆の現実に一歩でも接近し,国家の枠組み(=統治・支配の枠組み)に縛られない,民衆同士の共感・つながり・連帯を広げ,深めていく方向へと進んでいくようにしたい.
 現在,共和国民衆は,一定の方向を有した政治勢力,そうした政治主体としては登場していない.そのことをもって,今は,“共和国民衆との連帯を云々することはできない”とする意見がときどき聞かれる.しかしそれは,問題を先送りするための,正当化の論理でしかない.というのも,実際に,連帯していこうという方向で共和国の現実に目を向けるならば,そうした発言がナンセンスであることがはっきりするからである.
 今日の共和国において,現政権を批判する自由は,一切認められていない.もし政権批判を口にするようなことがあれば,「社会主義」「反帝国主義」を掲げる金日成政権によって,当人だけでなく家族をも含めて,徹底した弾圧−長期投獄・苛酷な強制労働・処刑等−が加えられることになる.したがって,共和国民衆が,公然と継続的に政治行動を起こす局面とは,すなわち,金日成−朝鮮労働党政権の劇的な崩壊局面に他ならないであろう.
 この間,在日朝鮮人が,この日本の地にあって,民衆の視点において,共和国社会の現状を語り,金日成政権への批判の声を上げ始めている.こうした在日朝鮮人の活動は,共和国に住む,自分の家族・親戚に危害が及ぶことになるかもしれない,しかし沈黙し続けるわけにはいかない,というぎりぎりの選択の中で,踏み出された活動としてある.こうした在日朝鮮人の立ち上がりに対して,現共和国政府を支持する総連活動家は,「裏切り者」「売国奴」「韓国のスパイ」といったレッテルを貼って,種々の妨害・破壊行為を繰り返し行っている.これは,共和国社会における強権支配・民衆弾圧を,在日朝鮮人社会においても貫徹しようとする行為であるといわざるをえない.

IV

 私たちは,この現実を前にして,傍観者でありたいとは思わない.しかし,ここにおいても,「日本政府の反共和国キャンペーン・排外主義宣伝に加担することになるから,現情勢においては,共和国政府への批判は,避けるべきだ」という,先送り・課題回避の意見が聞かれる.反帝国主義,反政府の力学的な政治の枠組みへと,何ゆえ民衆の意識・運動を押し込めようとするのか.民衆同士の共感と連帯をもって,新しい社会−新しい世界を創り出していく方向に進んでいくことに,どのようなためらいが必要なのか.
 必要なのは,民衆を動員・統制の対象ととらえる政治の転換であり,国境・民族を越えて民衆同士の交流が広がり,深まり,各々の置かれた状況等をめぐって意見を表明し合い,必要な共同行動を積み重ねていく,といった活動から目を背けることではないはずである.
 共和国−朝鮮人民への排外主義と闘争していくために何よりも求められるのは,民衆相互の共感を育み,連帯を強めていくことであり,“共和国のことは,共和国の民衆で”“日本人は,日本政府への反対運動を”というふうに,国家的枠組み・国家的分断構造の枠内に,自らの活動を限定することではないはずだ.

 帝国主義諸国は,現支配秩序の維持という自己の利害から,介入し,共和国を統制下においていこうとしている.一方金日成政権は,「核開発」を外交手段とした帝国主義との危険な駆け引きによって,支配体制の延命をはかろうとしている.対外緊張を政策的に創り出し,民衆を動員し,支配を強めようとする金日成政権を,私たちは,支持することも,擁護することもできない.
 帝国主義諸国による経済制裁・軍事力行使,朝鮮半島における戦争の勃発という,今後生じうる情勢の展開において,私たちは,それらが共和国民衆にとってどのような影響をもたらすのかを,しっかりと見て取った上で,自己の判断を形成していくようにすべきであろう.「経済制裁」は,底辺の民衆に対し,より多くの困難を強制するものとなり,戦争の勃発は,無数の民衆を死へ追いやっていくものとなるのである.
 そして,いずれにせよ,帝国主義の介入に民衆の未来をゆだねることはできない以上,朝鮮半島をめぐる情勢の流動にあって,民衆相互の連携と協同の力を強めていくことにこそ,運動の方向を向けていくようにしなければならない.


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